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トルシエがカタールW杯を総括。「日本の立ち位置は世界のトップ30か、せいぜいトップ20。それが現時点での真実だ」 (3ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

 変わったのは、その際の効率であるとトルシエは言う。スペイン戦での堂安律のゴールが、まさにそれに当たると。

「低いブロックを敷くチームは、ボールを保持する機会がそう多くはない。だが、ひとたび保持すると、効率よく得点を決めることができた。それは、選手のテクニックの質の高さであり、効率のよさだった。

 ボールを持たないチームは、効率の面でボールを保持するチームを上回っていた。選手のクオリティの問題で、10回試しても1度決まるかどうかという、すばらしいゴールを堂安は決めた。驚くべきパフォーマンスで、あのゴールはチームのコレクティブなメカニズムから生まれたものではない。個人的な快挙だ」

 堂安のゴールがなければ、試合はまったく別のものになっていた。個のパフォーマンスの効率をもっと考慮すべきだとトルシエは主張する。

「あのプレーにおける効率が、試合の命運を日本に引き寄せた。日本が攻めて、攻めて、攻めたのではなく、個の爆発が結果に直接作用した。堂安のゴールや三笘薫のアシスト......。この大会を通して、日本はその効率の恩恵を受けた。

 日本とドイツ、スペインとの違いは効率の違いで、日本がドイツやスペインと10回対戦しても、勝てるのはせいぜい2回がいいところだ。それが本当の差だが、この大会におけるプレーの現実は効率の違いだった。日本は効率面で突出していた」

 そしてW杯の現実と、世界サッカーのなかでの客観的な現実を区別するべきだとトルシエは述べている。

「W杯でのパフォーマンスならば、日本はトップ8レベルのクオリティを十分に見せた。だが、日本サッカーの進化を分析すれば、日本の立ち位置は世界のトップ30か、せいぜいトップ20であり、トップ10に入ってはいない。それが現時点での真実だ。

 モロッコの真実も同じだ。W杯では準決勝まで進んだが、世界全体のなかでの真の順位はトップ30だろう」

 サッカーの進化を、堂安のプレーだけから評価してはならないとトルシエは言う。

「それは大きな間違いで、ひとつの試合では監督のコーチングや選手のクオリティ、ゲームのシナリオなどで、日本は世界最強国を破ることも可能だ。それぞれの試合にしかるべき位置づけがある」

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