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トルシエがカタールW杯を総括。「日本の立ち位置は世界のトップ30か、せいぜいトップ20。それが現時点での真実だ」 (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

 だが、残念ながら、脳細胞のトレーニングはできない。本番と同様の心理状態を人工的に作り出せないからだ。本番の心理的なプレッシャーは練習では作れない。それぞれのPKに固有の状況がある。予測は難しく、選手がその場で対処するしかない。4-0でリードしている時に蹴るのと、0-1で負けている状況で(終了間際の)90分に蹴るのではプレッシャーがまったく異なる。同じPKでもまったく別のものだ」

 トルシエはカタールW杯をどう総括するのか。

 2018年ロシアW杯のフランスは、カウンター主体のスタイルで世界の頂点に立った。4年後のカタールでも、ベースとなる戦い方は変わらなかった。2014年ブラジルW杯で縦に速く、強度の高いスタイルでドイツが世界を制して以来、ポゼッションよりもインテンシティとトランジションが重要なコンセプトになった。

 カタールから何か新たなトレンドが世界に広まっていくのだろうか。

「変えられないものもある」とトルシエは言う。

「常にポゼッションを志向するチームがある一方で、ポゼッションを放棄しているチームもある。それぞれの戦略によるもので、どちらも否定はできない。たとえば、日本とベトナムが対戦したら、ベトナムは必然的に日本にボールの支配権を委ね、低い位置にブロックを敷いて守る」

 相手にスペースを与えない戦略は以前から存在し、攻撃側はスペースを見つけてこじ開けようとする。そのために、多くのパスを回す。

 逆に、低いブロックで守るチームがボールを奪った際には、相手ディフェンスラインの裏には広大なスペースが広がっている。スピード豊かなアタッカーがいれば、あるいは2~3本のパスで相手ディフェンスを崩せる選手がいれば、有効なカウンターアタックを仕掛けられる。

「そうしたコンセプトのもとでプレーしたからこそ、カタールW杯ではボールを保持したチームがしばしば勝利を得られなかった。ただ、この進化は今に始まったことではない。とりわけ強豪チームと弱小チームの戦いにおいてはそうで、だからこそジャイアントキリングが生じる。

 大国と小国の関係は常にそういうものだ。この大会ではより多く見られたかもしれないが、以前から同じことはあった」

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