トルシエがデシャンを評価していなかった理由。「彼のコーチングは戦略的ではない。従来どおり3人の選手交代を行なうだけ」 (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

「フランスは勝ち続け、デシャンはグループに修正を加えなかった。常に同じグループを維持し続け、決勝に至るまでコーチングもほとんど行なってはいない。しかし決勝では、フランスは初めて0-2とリードを許した。しかも、前半のうちに。スカローニがサウジ戦で陥ったのと同じ状況に、デシャンもようやく直面した。

 この時からデシャンは、監督としての仕事に取り組んだ。ちょっと遅すぎたかもしれないが、スカローニと同じ精神状態に陥り、同じ態度で臨んだ。その際のコーチングはすばらしかったし、フランスの後半のパフォーマンスもすばらしかった。危機の場面で、ふたりはほとんど同じ行動をとり、チームに適切な修正を加えた」

 デシャンは「偉大な監督であることをこの試合で証明した」というのが、トルシエのデシャンの評価である。

トルシエは当初、デシャンの手腕に疑問を持っていたトルシエは当初、デシャンの手腕に疑問を持っていたこの記事に関連する写真を見る しかしながら、カタールW杯開幕前、トルシエはフランス代表を評価してはいなかった。カリム・ベンゼマのケガによる直前の離脱は関係ない。彼は、指揮官であるデシャンのチームマネジメントとコーチングに批判的で、それは大会が始まり、フランスが決勝に進出しても変わらなかった。

 開幕前は「フランスの優勝はない」と言いきり、決勝も「有利なのはアルゼンチンである」と語っていた。それが、PK戦までもつれ込んだ壮絶な戦いのあとでは、デシャンを高く評価し直している。デシャンの何が彼の考えを変えたかは、先に記したとおりである。

 では、トルシエは決勝に至るまでのデシャンの何を批判し、どこに不満を感じていたのか。フランス対モロッコの準決勝の翌日、カタール政府とカタールサッカー協会から招待され滞在した、カタラ文化村のギャラリー・ラファイエットに隣接するレジデンスで、トルシエが語った。

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