「ドイツ戦の成功体験」を引きずった森保ジャパンの戦いを検証。結果オーライで論理的には整合性がなかった

  • text by Sportiva
  • photo by JMPA

森保ジャパンのカタールW杯を総括~杉山茂樹×浅田真樹(前編)

 カタールW杯も残すところ3位決定戦と決勝の2試合のみ。準決勝を終えたカタールの地に、もはや日本代表が成し遂げた"ジャイアントキリング"の記憶はおぼろだ。敗者は去っていくのみ。ラウンドが進めばすべては過去の話になる。果たしてなぜ日本はドイツ、スペインに勝てたのか。進むべき方向はこれでいいのか。そろそろ冷静に見つめてもいい時期だろう。現地カタールで取材を続けるスポーツライターの杉山茂樹氏と浅田真樹氏が、あらためて日本の4試合を振り返った。

杉山 ドイツ戦の前半は、プレスもかからずほぼ一方的に攻められていて、先制されるまでは自然な流れでした。ドイツというのはそこで満足しないで2点目をとりにくるチームで、実際、その後も攻め続けてきたけど、2点目は入らなかった。後半になってもそれは変わらなくて、彼らが「いつかは決まるだろう」、少なくとも「これは負けないな」と思ったのは確かだと思います。

浅田 後半になって日本は冨安健洋を入れて3バックに変えます。で、それが勝因であるかのように言われるけれど、60分ぐらいまではやはり一方的に攻められるばかりでした。ジャマル・ムシアラやイルカイ・ギュンドアンのシュートなど、いつ決まってもおかしくなかった。

杉山 ドイツは、日本が4バックを3バックに変えたのさえ気がつかなかったんじゃないですか。それぐらい攻められていた。権田修一のファインセーブあり、ポスト、バーに助けられたのあり。日本はラッキーだったと言えるし、この試合のMVPが権田なのは間違いない。日本が勢いを増してきたのは12分に三笘薫、浅野拓磨を同時に入れてからです。我々も見たことがない交代だから驚いたし、ドイツも初めて「あれ?」と思ったんじゃないですか。おそらくこの組み合わせでの練習もたいしてやってないだろうし、結果オーライとしか言いようがないですが。

カタールW杯初戦、ドイツから2-1の逆転勝利を収めた日本代表カタールW杯初戦、ドイツから2-1の逆転勝利を収めた日本代表この記事に関連する写真を見る浅田 ドイツ戦を単体で見る限り、フォーメーションを変え、メンバーを変えたことでうまくシフトチェンジできたと言っていいんだと思います。ただ、その後の3試合の流れを考えるとどうしても、「だったら、もっとこれをやっておくべきだったのではないか」とか、「これを突き詰めていたらどうなっていたんだろう」という疑問が出てきます。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る