若き日本代表たちが東京五輪の雪辱を果たす。「あの左足でやられたのは、今でも忘れない」 あまりに劇的で出来すぎたストーリー (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 とはいえ、時に思いもよらないことが起きるから、サッカーは面白い。と同時に、こうした"まさか"は、得てして未知の可能性を秘めた若い力が起こすものだ。

 今回の日本のワールドカップ登録メンバー26人のうち、東京五輪世代(1997年以降生まれ)の選手は11人。そのうち、9人が昨年の東京五輪を経験している。

 直近の五輪に出場した選手(オーバーエイジ枠を除く)がワールドカップの登録メンバー入りした数としては、(今回のワールドカップ登録メンバーが前回大会以前より3人増えたという事情はあるにしても)過去最多。それだけ若い才能が台頭してきたということだ。

 しかも、東京五輪準決勝でもスペインと対戦し、延長の末0-1と惜敗。結局、日本はメダルを逃す結果となっただけに、彼らにしてみれば、ここで雪辱を果たしたいという気持ちは強かったに違いない。

 今回のスペイン戦でも、東京五輪準決勝同様、FWマルコ・アセンシオが途中出場でピッチに立った。日本の金メダル獲得の夢を打ち砕く、決勝ゴールを決めた張本人である。

 だが、この日は強烈な左足シュートを持つ天敵にも、最後までゴールを許さなかった。

「あの左足でやられたのは、今でも忘れてないし、(アセンシオが)入ってきたので『絶対やらせないぞ』という思いでやっていた」(DF板倉滉)

「アセンシオがボールを持った時は、ちょっとオリンピックがよぎって怖かったけど、そういう経験からピッチのなかでできること、考えることも変わる」(田中)

 チームとして東京五輪での借りをワールドカップの舞台で返したばかりか、同点ゴールの堂安、逆転ゴールの田中、さらには逆転ゴールをお膳立てした三笘と、昨年の悔しさを知る選手たちが日本を救ったのだから、あまりに劇的で出来すぎたストーリーだ。

「自分たちがやりたいサッカーがやれているかというと、そうでないのはわかっているが、ワールドカップを勝つための最善策がこれである可能性も現時点では高い。このきついグループを勝ち残れたのは、まぎれもなく僕らの力だと思う」(田中)

 世界有数の強豪国、ドイツ、スペインを立て続けに下しての決勝トーナメント進出。そうは起こりえない快挙を、ひとまず理屈抜きに称えたい。

【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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