なでしこジャパンに厳しい現実。欧州遠征で無得点。今のままの3バックではW杯を戦えない (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 そのなかで10月の親善試合で爪痕を残した藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)はスペイン戦でフル出場し、高いクオリティのプレーを出し続けた。後半に至っては何度もドリブル突破をファウルで止められ、ピッチに転がされながらもセットプレーのチャンスを量産。特に長谷川から出たライナーパスに反応して空中で受けた場面は得意のボレーシュートまでは、つなげられなかったものの印象に残った。

「絶対にいいボールが出てくると思っていたので走るタイミングさえ合えば......でもワンタッチで振るかトラップするかっていうところの迷いがその一瞬に出てしまった」と悔やむ藤野。途中出場したイングランド戦でも堂々と相手と渡り合っていた数少ない選手だった。

「相手の間でボールを受けられる場面もあって、もちろんポジショニングだけで強度も対人の強さも避けられないところではあるんですけど、ちょっと余裕がありました」とパワーが落ちた後半とはいえ、イングランド相手に驚くべき感想を持っていた。また彼女にボールが入るとスペインは何度でもファウルを繰り返した。それらのファウルこそ、そこまでしないと藤野を止められないとスペインが判断している証拠だった。

「U-20の決勝では成す術なくスペインに負けた感じだったので、今回はフル代表に入って一つひとつのプレーがかみ合ってきている手応えはあります。でも、2試合とおして結果は得点ゼロ。最後とおればとか、シュート惜しかったね、じゃ終われない。日常のパスの1本1本の質とか気を抜いている部分もあったと思うので、そこは強くこだわっていきたいです」(藤野)

 格下相手ではなく、紛れもない世界トップとのマッチアップ経験は藤野を大きく変えるかもしれない。それだけでも収穫と言えよう。

 これで、なでしこジャパンの今年の活動は終了する。今のままではW杯は戦えない現実を突きつけられたなでしこジャパン。この重要な2連戦を3バックにかけたことで、今後に何を繋げられるか。

 グループリーグはともかく、決勝トーナメントを勝ち抜くためには今の強度の3バックでは通用しないだろう。このまま成熟させていくのか、はたまた4バックに戻すのか、攻守で使い分けるのか――。ワールドカップまで8カ月。池田太監督の取捨選択に注目だ。

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