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なでしこジャパンに厳しい現実。欧州遠征で無得点。今のままの3バックではW杯を戦えない (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 ところがスペイン戦で、イングランド戦の失点を引きずっていたのが、まさかの守護神・山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)だった。日本がゲームを支配しかけていた8分に放たれたミドルシュートがバーを叩き、その跳ね返りを拾われて先制されてしまった。その後、立て直したものの、これが決勝点となった。

「失点はセカンドボールを作ってしまった自分の実力のなさ......(イングランド戦で)4失点してからボールスピードが違う相手に対して前後のポジショニングに自信がなくなってしまっていた」(山下)

 イングランド戦後はそれぞれの失点を、3バックゆえのものとミス絡みと、冷静に分析していた山下だったが、苦しい葛藤があったようだ。人一倍自分に厳しい性分が発動し、「これをただの"経験"にしないつもりです」と自らを奮い立たせていた。

 選手のみのミーティングを行ない、守備を見直したことでスペイン戦は、ずいぶんと改善されたが、3バックの強みである"中盤の厚さを生かした攻撃"が結実しなかったことは大きな課題として残った。田中美南(INAC神戸レオネッサ)はGKと1対1に持ち込み、左ウィングバックの遠藤純(エンジェル・シティ)から長谷川唯(マンチェスター・シティ)、清水梨紗(ウェストハム・ユナイテッド)へつなぐ好機もあった。それでも結果は無得点。今の状況のスペインには勝たなければならなかった。勝負強さは試合のなかでしか培われない。

 このスペイン戦は3バックの修正とともに、最低でもドローに持ち込まなければならなかった。世界トップクラスのイングランドに大敗することも褒められたことではないが、それよりも万全でなく成熟していないスペインに勝てないことのほうに危機感は募った。

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