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トルシエはフランスW杯で知った日本サッカーについて何を思ったか。「最大の弱点はプレーが直線的で予測しやすいことだった」 (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kyodo News

 来日した彼は、当時協会の技術委員長だった大仁邦彌と初めて面会した。

「日本は事前に、私の情報を集めていた。アーセン・ベンゲルを通じてだが、フランス協会の幹部も絡んでいた。大きな体躯で眼鏡をかけていて、すでに故人になっているが名前は忘れた(ジャン・ベルバック副会長のこと)。

 大仁さんと東京で食事をした時、その人物の言葉を聞いて『確信した』と言っていた。アーセンも話したのだろうが、その協会の人物が私のことをいろいろ話して推薦してくれたのだろうと思う」

 次期W杯の開催国である日本で代表の指揮を執るのは、トルシエにとって魅力的なチャレンジだった。だが、「白い呪術師」の異名をとり、ナイジェリアやコートジボワール、モロッコ、ブルキナファソ、南アフリカなどアフリカでは勇名を馳せたトルシエも、アフリカ以外では未知の存在であり、アジアとの接点はまったくなかった。

「私が日本を知ったのはフランスW杯を通してだった」と彼は言う。

「それ以前は、日本に興味があるわけではなく、日本のサッカーも知らなかった。フランスW杯を通して、日本の情報を得た。試合もすべて見た。

 そこから得た印象は、戦う意志にあふれたフィジカルの強いチームであり、規律も申し分ない。アグレッシブかつコレクティブ、サッカーに必要な要素をひととおり備えているというのが、私が抱いた日本の印象だった」

 とはいえ、フランス大会ではアルゼンチン、クロアチア、ジャマイカに敗れて3連敗。パフォーマンスも決して満足のいくものではなかったが、トルシエにとっては、どちらもさして重要ではなかった。

「重要なのは、ポテンシャルがどれだけあるかであり、どんな選手がいるか、だった。確かに結果はよくなかったが、内容を鑑みれば、日本は容易に進歩できると確信した。

 ベースとなる選手たちは決して悪くはない。何かを構築できると思うことができた。これからチームを作り上げていくうえで、多くのポジティブな要素を私はこのチームから見出すことができた」

 それではトルシエは、日本のどんなところを具体的に評価したのか。

「彼らは90分の間、集中して強い気持ちでアグレッシブに戦うことができる。チームへの献身には疑う余地がない。すべての選手が持てる力のすべてを捧げている。その集中力の高さで、チームのために一丸となって戦っている。コレクティブな規律は最初に見た時から顕著で、日本は戦ったら厄介な相手だと思った」

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