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ベトナム戦で森保監督が試した 2つの布陣 。攻撃重視の4-2-3-1はW杯本番でも機能するか? (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

4-3-3が機能不全だった前半

 今回のベトナム戦は、前半と後半の2つに分けて掘り下げられる。

 まず前半は、ベトナムが開始から積極的に前からの守備を遂行したこともあり、14番(グエン・タイン・ビン)のヘディングシュートがネットを揺らした前半20分までは、自陣に引きこもって5バックで守る時間は少なく、ボール回収後は、日本陣内に前進するシーンも作り出していた。ベトナムにとっては、上々の立ち上がりだった。

 五分五分とまでは言わないまでも、この時間帯は明らかに日本は思いどおりの戦いができなかった。その間、日本が作ったチャンスは2度(6分、17分)あったが、いずれも三笘の単独ドリブルから生まれたカウンター後のシュートシーンだった。

 選手が変われば戦い方も変わることは想定済みとはいえ、その変化は攻守両面にわたって影響し、チーム戦術の機能不全を招いてしまった。

 4-3-3を採用した過去6試合の日本は、守備の安定化を図るべく、中盤にボランチタイプの3人を配置した。しかし、今回の試合で中盤を務めた3人で、ボランチを本職とする選手はいない。これまでダブルボランチの一角を担った柴崎岳に関しても、低い位置から攻撃の起点となるパス供給と全体のゲームメイクを武器とするタイプだ。

 しかも、初めて一緒にプレーする選手が多いため、お互いの共通理解が浅かったことも、機能不全に拍車をかけた。

 たとえば、レギュラー組の場合、左ウイングの南野拓実が中央寄りでプレーするため、左で幅をとるのは左SB長友佑都が担い、右サイドは主にウイングの伊東純也が大外に立つ。その際、カウンター対策として、主に左インサイドハーフが左に空いたスペースを埋めるのが基本。右SB酒井宏樹は、カウンターを浴びないよう、機をうかがいながら攻撃に参加する。

 それに対して、この試合の日本は、左の三笘が幅をとるポジションに立ち、右の久保建英は外と内を使い分けながらプレー。しかし、久保が中央寄りに立ち位置をとった場合、右SB山根が高い位置に出て幅をとり、右インサイドハーフの原口元気が右に落ちてスペースを埋めるという動きはなく、特に右サイドでバランスを欠いた。

 失点後、相手が自陣に引きこもるようになってからは、原口が山根を押し出すようなポジションをとるシーンが何度かあったが、それは攻撃を活性化させるために原口個人が判断したプレー。つまり、この日の日本はベトナムの戦い方を見ながら、同時に味方の意図も探りながらプレーすることを強いられていた。

「もっと絵を合わせていけるように準備しなければいけない」とは、試合後の森保監督の反省の弁だが、前半の日本が攻守にわたる不安定さを露呈した主な理由はそこにある。

 結局、失点後も含めて前半に計12本のシュート(公式記録11本)を記録した日本だったが、決定機と言えるチャンスはなく、クロス供給も9本(成功3本)のみ。また、4-3-3に変更してから激減した敵陣でのくさびの縦パスも4本で、1トップの上田綺世が収めたシーンは1度もなかった。受け手は、主に左インサイドハーフの旗手怜央だった(3本)。

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