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森保ジャパンに攻撃コンセプト崩壊のデータ。FWへの縦パスが激減している (3ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 トータル本数はオーストラリア戦の21本から23本に微増したものの、相手の実力の違いを考えれば、この試合で日本のサイド攻撃が機能したとは言い難い。

 これはオーストラリア戦でも露呈した問題だが、中央で起点を作れないままサイドを素早く突破してクロスを入れても、ゴール前の人数が足りないという現象が起こってしまうからだ。

 たとえば右から伊東がクロスを入れる場合、ゴール前に進入するのは1トップの大迫だけ、もしくは中央に絞ってプレーする時間が長い南野を加えた2人しか間に合わない。少し時間をかければ田中や守田英正が相手ボックス内に到達できる可能性もあるが、その時にはすでに相手の守備陣がゴール前でしっかり構えている。

 前半アディショナルタイム49分。日本は伊東のクロスに対して5人が相手ボックス内に飛び込むシーンを1度だけ作った。惜しくも守田に届かずフィニッシュには至らなかったが、GK権田修一を起点に始まったその攻撃は、田中が左サイドまで動いて同じレーンの前方に立つ守田にボールをつなげたあと、南野、遠藤を経由して素早く右の伊東に展開したもの。唯一と言ってもいい効果的な速攻だった。

 しかしながら、それ以外に同じような狙いの攻撃が見られなかった点から考えると、選手のアドリブによる攻撃だったと見て間違いない。そもそも田中が左サイドまで動いて守田と同じレーンに入ること自体が稀なプレーであり、残念ながら再現性は低い。

 結局、この試合で日本が作った決定機は、決勝点につながった前半17分以外では、立ち上がり6分の南野のシュート(田中の右からのクロス)シーンと、後半アディショナルタイム91分に古橋亨梧が素早く入れたクロスに浅野のヘッドがわずかに届かなかったシーンのみ。VARでオフサイドと判定された前半40分のシーンは、布陣や戦術に関係なく、あくまでも伊東が単独突破から放ったシュートだった。

 たとえば、もし日本の布陣が4-2-3-1であれば、状況は違った可能性は高い。中央最前線に大迫が張り、トップ下の選手が相手5バックとMFの間でパスコースを作る位置に立てば、南野と伊東も含めて計4人がターゲットとなり得る。

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