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伊東純也のスピードは「数を無効化」する威力。森保ジャパンは右サイドが生命線

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

カタールW杯アジア最終予選特集

 VARがサッカーに公平性をもたらしたのは間違いないが、サッカーの醍醐味を失わせてしまったことも確かだろう。

 スピードと豪快さに満ちた鮮やかなゴラッソが、人間の目ではおよそ認識できない微妙な身体の位置を厳格に示されたことで、無効になってしまうのだから。

 マグマのような感情の爆発は、ゴールが生まれた刹那に起こるもの。ところがVARの存在によって、一瞬のためらいが生じ、感情が抑制され、どこか空虚な空気がはびこってしまう。あるいはそれが失意に代わることもある。

 本来はエモーショナルなスポーツであるサッカーにおいて、その厳格さは果たしてどこまで求められるべきものなのか。伊東純也(ゲンク)の幻のゴールを見て、怒りにも、悲しみにも似た想いが湧いた。

鮮やかな先制ゴールで窮地の日本代表を救った伊東純也鮮やかな先制ゴールで窮地の日本代表を救った伊東純也この記事に関連する写真を見る もっとも、当の伊東自身は「別にしょうがないなと思いました」と、淡々とそのシーンを振り返っている。

 この飄々としたアタッカーが、窮地に陥った森保ジャパンで一際、存在感を放っている。立ち上げ当初「新ビッグ3」と言われた中島翔哉(ポルティモネンセ)、南野拓実(リバプール)、堂安律(PSV)による2列目セットの序列を崩した快足ドリブラーは、3トップに代わっても日本の右サイドで輝きを増している印象だ。

 この日の日本のテーマは、ベトナムの5バックをいかに崩すかにあった。ボールを持つ時間が長くなるものの、中を固められて崩せないまま、スコアレスドローに終わる。あるいは一瞬の隙を突かれてカウンターから失点、という最悪なプランも想定できた。

 しかし、そんな嫌なシナリオを伊東が早々に崩してみせる。17分、カウンターに素早く反応すると、長い距離を一気に走ってエリア内に侵入。左からの南野のグラウンダークロスを冷静にゴールへと押し込んだ。

「カウンター気味で拓実がうまく裏に抜けたので、とにかく相手の前に入って速いボールがほしいと思ったら、ちょうど拓実からいいボールが来た。あとは押し込むだけでした」

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