猶本光を突き動かすドイツで生まれた感情。来年の五輪までの目標は (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そこに至るまでのスピードには驚かされた。これまでのシュートと比べ、タイミングが桁違いに速かったのだ。当然、相手のブロックは間に合わず、崩しからフィニッシュまですべてが完璧で、猶本が見せた力強いガッツポーズも頷ける会心のゴールだった。

今回オンラインでのインタビューで目標を語った猶本光今回オンラインでのインタビューで目標を語った猶本光"シュートのタイミングを速める"ことを頭で理解していても、それを実行するまでには相当の努力と時間を要するはずだ。実際、猶本はかなりシュート練習をしていた。

「これまでの狙い方だと、シュートが自分の調子にすごく左右されていると感じていました。そこで、軸足の位置や助走を決めて、自分の動きをあえて機械的にしたんです。そうすることでシュート練習をしていても、同じところに蹴ることができて、どこがダメだったかもわかるようになりました。そのおかげで今は正確さが増した気がします。ゲーム練習でも対人的な局面はいっぱいあるので、引き出しも確実に増えてきました」

 このシュート練習がセットプレーでも効果を発揮していた。特に猶本が担当する右CK(コーナーキック)で蹴り出すボールは非常に精度が高い。

 ゴール前で待ち構える菅澤や南萌華、長船加奈、清家貴子はいずれも空中戦に強い選手たちだ。誰がターゲットになっても、タイミングがピタリと合っている。初戦でも猶本のCKから清家と菅澤がゴールをモノにしている。このクオリティを高めていけば、今シーズンの浦和にとって大きな武器になる。

「シュート練習が効いてるのだと思います。セットプレーがすごく安定してきたんですよ。『こういうタイミングで入ってきてほしい』ということも、場所ごとにみんなと話し合いました。イメージ的には、ボールに合わせてもらうんじゃなくて、走り出した人にボールをぶつけていく感じです」

 自分のイメージに近いボールを蹴られていることが、ゲームを見ている側にも伝わるのだから、当人の実感は大きいだろう。

「でもそう感じることができたのは、最近なんですよ(笑)」

 そうであるならば、彼女のキック技術は今後さらに高まりを見せてくれそうだ。

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