U‐18代表コーチが気づいた
「日本と欧州の育成年代の選手の違い」 (3ページ目)
日本人はインサイドパスとかボールコントロールはうまいと言われるんです。でも、タッチライン際でボールを受けた時に、ファウルを受けて倒れてフリーキックにしてマイボールにするというプレーは少なくないですか? 相手を抜くか、スローインになるかしかない。敵とボールの間に身体をおいて、遠いところにボールを置いたら、取られないですよね。取られないところに置いて、相手が無理をしてきたらファウルをもらって一回時間を作るというプレーはとても少ない。
自分たちのボールの時でも、キープしろと言ったらできるんですけど、それをゴールにつなげるためにどうやって使うか、シチュエーションとして意識できているかというところに差を感じます。
U‐18の選手たちにも話しましたが、パス・アンド・コントロールの練習で、日本の子どもたちは間違えないで動くんですけど、スペインの子どもは間違えるんです。でも、スペインの子どもは、シチュエーションを教えると、『わかった、わかった』と言って正しく動く。教える側が『ここに出して、こう動く』と伝えるのではなくて、状況から逆算できる。
僕ら指導する側にも、どこまでトレーニングのなかで状況整理して落とし込めているかという問題はあります。
もちろん、ボールは蹴れば蹴るほどうまくなる。でも、それがどのシチュエーションで必要か、どのプレー強度で必要かを含めて指導できているか。トレーニングのリアリティ(現実性)、クラリティ(明瞭さ)という言葉を使うんですけど、何を取り、何を捨てていくかという葛藤はあって、ずっとゲームやればリアリティが高まるけれど、それだけでいいのかとも考えます。選手はトレーニングを受けるのか、一緒に考えるのかも、常に葛藤です」
――そういう意味でも、初の代表、初の国際試合という選手にとって、とても実り多い時間になったようですね。
「今回のU‐18のメンバーは、僕が実際に見たなかから、影山監督とも相談して選んだ選手たちです。初めての選手たちは、世界との距離感をすごく感じたのと、短い遠征中にそれをぐっと縮めることができたという、ふたつの感触があったと思う。そういうことを感じられる選手が何人もいて、彼らはあっという間に成長するんです。遠征自体は(練習試合を含めて)1勝2敗だったけど、ここから(U‐20W杯に向けた)1次予選にチームを作るための競争力は上がったと感じています。(選手選考の)序列を崩せるような遠征になったとは思います」
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