なでしこ、フランスに惨敗。リヨン所属の熊谷紗希だからこそわかること (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 最も重症だったのは、ボールキープがまったくできなかったこと。何度も押し寄せるフランスの攻撃を何とか押しとどめたとしても、奪ったボールを保持することができない。フランスは、日本がボールを持てばすぐさま猛烈なプレスをかけてきた。そうなると日本は、文字どおり為す術もなくボールを奪われ、その先に待つのはフランスのカウンター攻撃。これがひたすら繰り返された。

 そんなゲームだったからこそ、その存在が際立ったのがセンターバックの熊谷紗希(リヨン)だった。フランス代表にはチームメイトが数多く名を連ねており、対戦を楽しみにしていた。ワンサイドゲームになり、苦境に陥っていくなか、当初は前線から守備をして、サイド攻撃を抑える形を狙っていたが、抑えきれないと判断すると最終ラインの中央で防ぐようになっていく。

 つまり、中に蹴り込まれたボールの的になっているバレリー・ゴーバンを熊谷が抑えるという図だ。最初の対決では、競り負けて先制点を献上してしまったが、その後は意地の奮闘で空中戦はもちろん、フィニッシュに持ち込ませる前段階で次々に潰していった。まさに最後の砦としての貫禄を見せた。

「球際とかは、ほぼフランスが勝っていたと思うし、守備として3失点というのもすごく悔しい」と振り返った熊谷には、相手をよく知るからこその悔しさもある。

「失点シーンに関してはポジションもそうですけど、自分に何ができたか、もっと個の能力だったり、守備力を上げていかないと」(熊谷)

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