プチサプライズもあった森保Jの顔ぶれ。福田正博が監督の狙いを読解 (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 もちろん、試合を経験させることが大切であるものの、それがすべてではない。若くて才能のある選手たちを順調にステップアップさせていくためには、試合に使わなくても、日本代表チームの空気に触れさせることで、その後の成長を促すことになる。

 私が現役の頃、浦和レッズに長谷部誠(フランクフルト)が高卒ルーキーとして入団してきた。新人だった長谷部は、試合に出るどころか、ベンチメンバーにも入れなかったが、当時監督のハンス・オフトは、毎回遠征に長谷部を連れて行った。長谷部は「遠征に行きたくない」と拒否したが、オフトはそれでも毎回帯同させた。

 オフトの狙いは、長谷部に「主力選手が試合前日や試合当日にどういう行動をし、どう準備するのかを学ばせる」ことだった。長谷部に期待しているからこそ、また、将来必ずクラブの中心になると確信していたからこそ、試合には出さなくてもトップチームの雰囲気を体験させる手法を取ったのだ。その後、長谷部がどう成長していったかはご存知のとおりだ。

 日本代表でも同じことが言える。メディアからもサポーターからも注目される日本代表は、注目されることに慣れていない初招集の若手にとっては、疲れにつながるケースもある。そうした若手が、欧州組やベテランの振る舞いを見ることで成長し、Jリーグに戻った時の意識の変化にもつながる。代表監督は選手を直接的に育成することはできないものの、代表に招集することで、選手に気づきのきっかけやモチベーションを与えることができる。そうしたマネジメントもあるということだ。

 今回の対戦相手であるコロンビアもボリビアも、アジアカップでの対戦相手よりも高いインテンシティがあり、したたかさも持ち、個の能力も高い。簡単に勝つことはできないだろう。

 さらに、コロンビアはW杯ロシア大会に続いて日本代表に2連敗はしたくないというモチベーションの高さもあるはず。W杯ロシア大会で香川が「10回戦って1回勝てるかどうか」と言っていた強豪と対戦できる機会は、そうそうあるものではない。

 そうした相手に対して、森保監督がどういう選手の組み合わせを試すのかは楽しみな点だ。チームとしての規律やコンセプトを守りながら、ひとりでもふたりでも、自分のよさを発揮してくれる選手が現れてくれることを期待している。

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