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日本中が熱狂した「マイアミの奇跡」で
前園真聖が感じたこと (5ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai keijiro

 そしてそのまま、日本は1-0でブラジルを破った。グループリーグ突破に向けて、難敵から貴重な勝ち点3を獲得することができたのである。

「マイアミの奇跡」について語る前園真聖「マイアミの奇跡」について語る前園真聖「試合には勝ったけど、自分の中では納得のいかない部分があった。それは、俺を含めて攻撃の選手(の中)には、みんなあったと思うよ。28年ぶりの五輪で、俺たちには失うものがなかった。だから、本気のブラジルとガチで戦って、その結果を受け入れて『次のステージへ』って思っていた。

 でもまあ、あれだけ攻められたんで、『攻撃的に』と言っても、うまくできなかっただろうけど、自分たちの本来のよさである攻撃を、最初から考えないのは『違うよな』って、試合後も思っていた」

 前園ら攻撃陣の胸の内に積もった不満やストレスは、ブラジル戦後の練習からも見て取れた。

「マイアミの奇跡」に沸く日本とは裏腹に、実際にピッチに立っていた攻撃陣は"自分たちのサッカー"を貫けない状況に置かれ、思うようにプレーできないことに、気持ちがささくれていた。チームの勝利が一番だと理解していても、「自分の力を試したい」という気持ちが強く、割り切ることができなかったのだ。

 そのせいか、チームの練習は初戦の勝利にもかかわらず、ピリピリとした緊張感が漂っていた。

 練習を終えると、目を吊り上げた前園が引きあげてきた。その後ろを大勢のメディアが追いかけた。

 だが、キャプテンであり、エースである前園は口を開くことなく、そのままバスに乗り込んでいった。

(つづく)

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