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福田正博はロシアW杯で確信!
「ベスト8進出」へ日本に必要なもの (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by JMPA

 しかし、今回はグループリーグ3戦目のポーランド戦に先発メンバーを6人も入れ替えて臨んだ。グループリーグ突破が決まっていない状況での大幅な変更はギャンブルの要素もあったが、決勝トーナメントに主力選手を万全のコンディションで挑ませるために、不可欠な決断だったといえる。

 この決断をしたからこそ、ポーランド戦を0−1で落とすことになった。1戦目、2戦目で控えだったメンバーを起用して引き分けを狙ったが、試合時間が経つにつれて連係に綻びが生まれ、最終的にはポーランドに先制点を奪われてしまった。

 この時点でコロンビア対セネガルが0-0の膠着状態だったこともあって、西野監督は乾貴士を投入したが、先発メンバーから6人も入れ替えているチームに主力を投入したところで、流れを取り戻すことは難しい。だからこそ、直後にコロンビアが先制したことで、西野監督は攻撃に出ないという選択をしたのだろう。

 あのとき、ベンチ内は相当に混乱していたという。別会場の試合状況が入ってくる中で、もっとも怖いのはチームに方向性のズレが生まれること。攻めるのか、守るのか。その認識の統一が損なわれると、決勝トーナメントに進む可能性を自分たちで消してしまう危険性もあった。その中で西野監督がグループリーグ突破のために決断した。

 フェアプレー・ポイント差での勝ち抜けを狙って、眼前の試合で負けているのにボール回しをする日本代表に、凄まじいブーイングが浴びせられた。現地の2階スタンドで見ていた私のところでも、声量は相当なものだったが、声が上から降ってくるピッチにいた選手たちは、さらに大音量で聞こえたはずだ。

 それでも、日本代表選手たちは臆することなくミッションを遂行した。世界はもとより、国内からもこの姿勢には賛否の声があがったが、あの決断を下した西野監督が一番悔しさを抱えていたと思う。

 守備的なことを何よりも嫌がる監督が、目的のためにこだわりを捨てた。悔しくないわけがない。しかし、見方を変えれば、何が何でも、決勝トーナメントに進出することに賭けていたのだ。

 大会前、ほとんどの人が期待していなかった日本代表が、決勝トーナメント進出を成し遂げた要因は、選手層が以前よりも厚みを増したことが見逃せない。W杯メンバーは23人いるが、過去の日本代表はスタメンと控えの力の差が大きかった。だが、今回は大幅な選手の入れ替えができるまでの選手層になったということだ。

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