川口能活が語る南アW杯。レギュラー剥奪された選手もグッとこらえた (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「みんな、言いたいことも言えず、(いろいろなものが)たまっていた。ガス抜きじゃないけど、(選手だけのミーティングを開いて)お互いに意見をぶつけてみれば、まとまるかなと思ったんです。

 ミーティングの最後に(田中マルクス)闘莉王が『俺らは下手くそなんだから、気持ちを出して、泥臭くやるしかなんいだ』と言ったんですが、そのときにチームがまとまったかというと、そこまでには至らなかった。まだチームが変わり始めたばかり。雰囲気はそれほど変わらないまま、(その日のミーティングは)終わった感じでした」

 それから3日後、チームは大幅に刷新されたメンバーとシステムでイングランドとのテストマッチに臨んだ。さらに、キャプテンも中澤佑二から長谷部誠に代わった。その後に行なわれたコートジボワール戦も同様だった。

 その結果、それまで主力だった選手の多くがピッチから離れることになった。だが、意外にもチームの雰囲気は悪くならなかった。レギュラーの座を奪われた選手たちが、献身的にチームを支えていたからだ。その姿を見て、川口は心が震えたという。

「レギュラーメンバーの入れ替えがあると、チームはすごく難しくなる。自分が中心でやってきた選手からすると、受け入れ難い状況だと思いますから、どうしてもギクシャクしてしまう。それは、選手の心理として、当然だと思うんです。

 でも、あのときはそうはならなかった。正剛とは特に話はしなかったけど、同じGKだし、(楢崎の)気持ちは痛いほどわかった。大会前に代えられるのは本当につらかったと思うけど、しっかりとセルフコントロールしていた。

 シュンも内心では『なにくそ』と思っていただろうけど、そんな態度は一切見せなかった。あのチームはもともとシュンのチームだったから、本当に(気持ちを整理するのは)大変だったと思うけど、自己犠牲の精神でチームを支えていた。日本代表チームの一員として見せた、あそこでの姿は本当に立派でしたね」

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