川口能活が語る南アW杯。
レギュラー剥奪された選手もグッとこらえた (2ページ目)
しかし、チームの雰囲気は決してよくなかった。4月の親善試合でセルビアに完敗を喫し、壮行試合となる日韓戦でも0-2と敗れた。川口は自らが代表にいたときとは明らかに違う空気をチーム内に感じていた。
「僕が合流したときは、親善試合で勝てない試合が続いて、チームに余裕がなかったですね。プレーの中でのズレもあった。みんな、言いたいことがあるのに何も言えない、といった感じでした。
たぶん、僕が(チームに)入る前からそういう感じだったんだと思います。(W杯メンバーの)選考の最中では、なかなか言いたいことも言えないし、要求もできないですから。そうして積み重なってきたものが、チームの雰囲気に出ていました」
そうして、暗いムードのまま、チームは合宿地となるスイスに向かった。
現地での練習2日目、チームのシステムが4-2-3-1から、阿部勇樹をアンカーに置く4-1-4-1に変更された。ピッチ内には、"エース"である中村俊輔の姿はなく、GKも楢崎正剛から川島永嗣に代わった。
「ここにきて、シュン(中村俊輔)や正剛を外すのかって驚きが、チーム全体にありました。僕もそう思いました。当初は、永嗣の起用も(大会前の)テストマッチ用だろうと思っていたし、阿部ちゃんのアンカーもオプションのひとつだと思っていて、まさかこのままいくとは思っていなかった。あれは、岡田さんの"賭け"だったと思います」
大会直前の選手を含めたシステムの大幅な刷新は、さすがにチーム内に大きな動揺を生んだ。チームが揺れるなか、危うい空気を察した川口は、その日の夜、宿舎で選手だけのミーティングを開いた。
2 / 5