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最後は「恨み節」も。
手倉森誠監督のオヤジギャグに隠された本音 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by JMPA

 そんな手倉森監督の会見は、大半が中年の日本人記者陣には好評だった。ただ、その陽気さと弁舌の巧みさは、時に報道陣を煙に巻くためにも使われた。

 例えば敗れたナイジェリア戦後の記者会見。ナイジェリアの当日現地入りに関する騒動に触れ「(コンディション面で日本にアドバンテージがあるかもしれないという)周囲の風潮に影響されたかな、と。終わってみれば罠をかけられたような......」と、巧みに原因を外に求めた。

 ついその前日までは「ナイジェリア戦がメダルへの全て」「『相手のアクシデントは頭に入れるな。自分たちのやってきたことを信じよう』と選手に話した」などと語っていたのだから、一貫性がないと言われても仕方ないだろう。

 一方、その陽気さはチームを救った。「監督が一番不安なはずだけど、心配するなと言ってくれていた。責任は俺にある、と」と浅野が言うように、常に選手たちを鼓舞し続けた。その結果、周囲に悲壮感は漂わず、取材していても息苦しさを感じることはなかった。

 手倉森監督が一番厳しい表情を見せたのは、コロンビア戦後の記者会見だった。口を真一文字に結び、眉間にしわを寄せた。勝てるはずの試合で勝ち点2を落としたと思っているのは明らかだった。しかしそれも会見の冒頭だけで、話しているうちにいつもの明るさを取り戻し、会見後の囲み取材の場に移るとさらにそれは加速した。

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