元なでしこ・永里亜紗乃が語る
「引退した今だから伝えられること」 (4ページ目)
今後を模索している間にも時間は過ぎていく。現役を続けられるものなら続けたい。それでも膝の状態は限界に達していた。
「次のシーズンのことを考える時期になったとき、膝の状態はもう練習後は歩けないほどでした。使うとその分、日常生活に支障が出ることを実感していたから、これをあと何年か続けたら......怖さを自分で感じていたので決断できたのかもしれません」
長く痛みと戦い、悩み苦しんだ末に決めた"引退"だった。
永里亜紗乃にとってU-20ワールドカップで決めたゴールは特別だったという そもそも亜紗乃は姉・優季も認める才能の持ち主だ。U-17、U-20と、世代別代表の時代からその高いサッカーセンスには定評があった。名門・日テレ・メニーナからベレーザへ昇格したのは2007年。翌年には北京オリンピックの代表候補にも選出された。
本人がずば抜けて印象に残るゴールはこの頃のもの。2008年のU-20女子ワールドカップ第2戦、ドイツを相手に同点にされていた82分、パスを受けた亜紗乃が反転から左サイドネットぎりぎりのコースに叩き込んだ。全カテゴリーを通じて一度も勝ったことがなかったドイツを下し決勝トーナメント進出を決めた会心のゴールだった。
当時も「ここしかないっていうコース。打った瞬間に入ったと確信しました」と語っていたが、今も「忘れられないゴールです。あれほど周りがゆっくり見えたことは後にもなかった」と振り返った。
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