世界王者とドロー。高倉新監督が取り戻す「なでしこの神髄」 (3ページ目)
「ボールを受ける前からガツガツこられていたので、(相手を)外す動きは入れていました。引きつけて逃げる方が好きなので、逆にあれだけこられると相手を置いてきぼりにもできる」と、アメリカ相手に駆け引きの手応えを感じ取りながらも「全然だめ。2、3割の出来です」と自らの採点は厳しめ。しかし、高倉監督のアンテナに引っかかった理由が頷けるパフォーマンスだった。
後半に入ると事態は一変する。大儀見がまさかの2枚目のイエローで退場となったのだ。一気にプランが崩れた。直前に投入されていた横山久美(AC長野)は完全に仕事場を奪われた。日本は防戦一方になりながら耐えしのいでいたが、セットプレーからモーガンのヘッドで同点に追いつかれると、89分にはついに逆転を許した。
しかし、ここでなでしこたちが本領を発揮する。この試合で横山に訪れた唯一のチャンスであり、日本にとってのラストチャンスがやってくる。ロスタイム3分、阪口が絶妙なタイミングで混戦の中から出したボールは横山の足元にピタリとハマった。「トラップした瞬間にもうGKと1対1だった」と横山は、待ちに待った最大のチャンスをしっかりとモノにした。
苦しい局面で、なでしこジャパンが持つ最大の魅力である“粘り”が久しぶりに発揮された。世界最高峰の戦いを経験したことがない選手たちが多いピッチで、そこへ導いたのは阪口だった。2失点目を喫した後、阪口はすぐさま選手を集めた。
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