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澤穂希の軌跡(2)
宮間あやの想い「すべてはホマを輝かせるため」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 大会中、澤はこの言葉を何度も口にした。宮間はその言葉に感謝しながらも、それ以上に悔しさも沸き上がった。このままでは終われない。これで終わる澤ではないと信じていた。澤の力を証明したかったのだろう。

「FKはすべてホマに合わせるつもりで蹴る」。練習でも宮間は澤の得意とするニアサイドへのキックを何度も調整しながら繰り返した。すべては澤をもう一度ピッチで輝かせるため。宮間のサッカー人生には常に澤が存在していた。他の選手と違うのは、その時間に限りがあることを宮間は最初から心に留めていたこと。だからこそ澤とプレーできる代表は特別な場所であり、その一瞬一瞬を無駄にできるはずもなかったのだ。

 澤は引退を決めた際、その決意をごく身近な人間にしか明かしていなかった。宮間は澤本人から伝えられた数少ない人物だ。

「(引退を決めたことに)何も言うことはない。ありがとう。一緒の時代にサッカーができたことをうれしく思う」――いつかくることと覚悟をしていたとはいえ、宮間が感じた喪失感は計り知れない。それもわかった上で、澤はリオデジャネイロオリンピックへ向けて"なでしこジャパン"にエールを送った。

「結果がすべて。私が獲れなかった金メダルをリオで獲って」

 簡単なことではない。けれど澤と所属チームを別にしながらも、常に真正面から澤を感じ続けてきた宮間にしかできないことがある。それが"澤穂希"がなでしこで戦ってきたという、もうひとつの確かな証(あかし)になるのではないだろうか。
(つづく)


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