イラク戦は「大人の戦い」。今がピークの日本に募る不安 (2ページ目)
日本がゲームを完全に掌握したからだ。イマイチだった乾に代わって入った清武がまずまずのプレイを見せたこともあるが、この1-0の状況に適していたのは今野だった。ベンチに下がった遠藤が、何かクリエイティブなプレイをしようと前向きになるタイプだとすれば、今野はその逆。きわめて地味なタイプだ。果敢に前に出て行くことはないが、ボールさばきが安定していて、間を持たせる動きにも定評がある。
早い話、遠藤より攻撃的ではないのだが、奪われるリスクはその分、低い。今野にボールが渡ると、日本はグッと落ち着いた。イラクの気勢を削ぐ効果もあった。イラクは高い位置からガツガツと、ボールを奪いに来ることができなくなってしまった。高温多湿。ブリスベーンの真夏の気候が、それを後押しした。イラクは敗戦を甘んじて受け入れるような、専守防衛の態勢に向かうことになった。
八百長問題で揺れるアギーレだが、この選手交代の妙を見せられると、「解任だ!」と騒ぐことに、大きなリスクが付きまとうことを実感させられる。追われると弱い日本が、イラクというそれなりの相手に余裕で逃げ切ることができた理由は、日本人選手の力だけではない。これまで逃げ切りが苦手だった理由は、気質より監督の手腕と大きな関係がある――とさえ言いたくなる。
だが、遠藤にしても今野にしても、あと何年代表でプレイできるか分からない選手だ。ふたりは今大会期間中にそれぞれ35歳、32歳になる。2018年ロシアW杯までもつかと言われれば、ノーと言った方がいい選手だ。またそうでなくては、日本代表の将来はきわめて暗いと言わざるを得ない。
アギーレもその辺りは承知しているはずだ。当初、2人を代表チームに呼ばなかった理由だと思われる。できれば、若い選手でアジアカップに臨みたかった。これが本音だろう。だが、両者に代わる選手はいなかった。彼らに加え、間もなく31歳の誕生日を迎える長谷部誠も、好成績を望もうとすれば、外せない選手になる。そこに日本の弱みがある。
1-0の逃げ切り劇を支えたのはアギーレの采配だと述べたが、少なくとも今野がいなければ、それは上手くいっただろうか。その次に控える柴崎岳で、可能だっただろうか。
僕は今、日本代表がピークを迎えていると思っている。長谷部、遠藤、今野が代表から去った後の日本は、かなり危うい。本田、長友佑都、岡崎慎司も、次回W杯では31~32歳になっている。日本代表がまもなく高齢化という問題に直面することは、火を見るより明らかなのだ。1-0の逃げ切り劇は、本来、監督が誰であろうと、アジアレベルではできて当たり前の芸当でなければならない。
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