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【なでしこ】不安と問題だらけの決勝トーナメント進出 (2ページ目)

  • 早草紀子●文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by REUTERS/AFLO

 先制点を挙げた川澄に笑顔がなかったように、この日選手たちは大量得点を目標にしていたため、ゴール後にも、気を引き締め表情を崩すことはなかった。そんな中堅選手たちの顔が綻んだのが、宮間がダイビングヘッドで決めた10ゴール目だった。川澄からの絶妙なクロスが中二人を飛ばして奥に走りこんだ宮間へ。

「このチームではなかなかない3人目の動きを見てくれたことがうれしかった」(宮間)

笑顔の訳はようやくチームに芽生えた希望を見つけたことだった。勝利だけではなく、より多くのゴールを必要とする試合はことさら難しい。常に時間に追われ、攻撃は自然にテンポが速くなる。

 柳楽雅幸監督率いるチャイニーズ・タイペイとの第3戦は、日本的組織サッカーを巧みに取り入れたプレスで日本は苦しめられた。(結果3-0)加えて、日本はここにきて人手不足が響いた。

 そもそも今大会の招集メンバーは若手中心。連覇のかかったプレッシャーの中でベテランに頼らず、実際に出場機会を増やすことで、若手の成長を促すための大会と、佐々木則夫監督は位置付けていた。全員が100%以上の力を発揮するだけでなく、若手が期待以上の成長を見せて、初めて連覇が見えるギリギリの選択だ。

 ところが、FW髙瀬愛実(INAC神戸)を筆頭に、MF猶本光(浦和レッズ)、菅澤、DF長船加奈(仙台レディース)という、まさに指揮官が今大会で一皮むけてほしいと思う人材がことごとくケガで別メニューを強いられるという事態に陥った。特にFW陣に関してはペアを組み替えながら全員に効果的にチャンスを与えようとしていただけに、大誤算だった。それがそのまま試合に影響を及ぼした。

 スタメンでトップに入ったのはボランチの阪口。苦肉の策だった。それでも、開始3分で有吉佐織がマイナスへ切り替えしたボールに阪口が合わせて得点。チームメイトの力みを消し去るには十分のゴールを決めてみせた。2点目は宮間&阪口のコンビネーションプレイからの川澄のクロスに吉良が合わせるという完璧な崩し。弾きクセのある相手GKのこぼれ球を狙っていた川澄が、余裕のループで決めて3点目。途中、ゴールが認められない不運もあったが、最終的には得失点で中国を上回り、日本は無事に1位通過を果たした。

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