ブラジルW杯惨敗の引き金になった「本田の言葉」 (2ページ目)
杉山 でもそれは、MF本田圭佑(ミラン/イタリア)が「W杯で優勝する」と言っても、メディアが本気で取り上げなきゃ、大した問題にもならなかったと思うよ。
中山 そう。選手が優勝したいって言うのは勝手。最初から「負けたい」なんて思っている選手はいないですからね。でも、メディアはそれを真に受けちゃいけない。選手の言葉をちゃんと料理して、発信してあげないと。一緒になって舞い上がったり、変に煽(あお)ったりするから、ファンだけでなく、選手たちも勘違いして、現実を直視したときにあたふたしてしまった。
浅田 本当にイケイケドンドンで臨めるんだったら、根拠のない自信であろうと、それはそれでありだった。でも、そうではないのに、不安を隠すために大風呂敷を広げていた感じがするね。
中山 ヨーロッパでプレイする選手が多くなったって言っても、(実質的な世界最高峰の舞台となる)欧州チャンピオンズリーグにコンスタントに出場してきたのは、DF内田篤人(シャルケ/ドイツ)くらい。それじゃ、チームとして"世界"は見えていないですよ。
杉山 まったくわかってなかったね、世界のレベルが。
日本代表の中で最も安定したプレイを見せていた内田篤人。中山 内田だけはわかっていたんですけどね。日常的に本当に高いレベルでプレイしていたから、W杯で勝つことがどれだけ難しいかってことが。
杉山 実際、内田が一番まともな発言をしていたと思う。上がどのくらいのレベルなのかがわかっているから、自分も謙虚になれる。つまり、自分の立ち位置がわかっているから、下手なことも言わない。
中山 発言もそうだけど、3試合通してのプレイも日本代表の中で一番まともだったと思いますよ。
浅田 そうは言っても、さっきの話と逆の意見みたいになっちゃうけど、世界的にもビッグクラブと言われる、マンチェスター・ユナイテッド(香川真司)をはじめ、ミラン(本田)やインテル(長友佑都)でやっている選手がいるわけじゃないですか。正直、もっと自信を持ってプレイして、何かあっても切り替えてやれるのかなと思っていたんだけど......。要するに、2006年ドイツ大会の頃の日本代表(※)とは違うはずだと期待していたんだけど、案外だらしなかった。
※2006年ドイツW杯に挑んだ日本代表は、その前の2002年日韓共催W杯で決勝トーナメント進出を果たした主力メンバーがほとんど残っていて期待されたが、グループリーグ敗退に終わった。
中山 DF吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)にしたって、プレミアリーグでマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルと対戦しているわけだしね。
杉山 彼の場合、たまにしか試合には出てないけどね。
中山 そうなんですけど、高いレベルのリーグでプレイしている分、何かしら"違い"を見せてくれるかな、と思っていたんですよ。でも、結構ビビってプレイしていた。
杉山 それはやっぱり、本当の自信なんてなかったってことでしょ。表向きとは違って、内面では自分の力が(世界では)足りないってことがわかっていたんじゃないの。
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