名波浩が絶賛。「エース」本田圭佑のプレイが変わった (2ページ目)

  • 飯尾篤史●構成 text by Iio Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 そうは言っても、本番は来年の6月。先発11人のメンバーは完全に固定はされないだろう。チームの底上げを図るためには、メンバー間の連係を高めつつも、ポジションごとの競争意識は維持していくはずだ。

 なかでも、1トップに関しては熾烈な争いになると思う。大迫なのか、柿谷曜一朗なのか、最後までわからない。特にストライカーは、その時点でコンディションが良く、自信を持ってプレイしている選手が起用されるべきだと思うからだ。そういう意味では、これまで代表に呼ばれたことのない選手でも、いきなり抜擢される可能性のあるポジションと言えるかもしれない。

 ともあれ、現時点で自信を持ってプレイしているのは、大迫。ポストプレイや、攻撃の深さを作るポジショニングで2列目を生かしながら、自らも積極的にゴールを狙う姿勢には好感が持てる。これまで前田遼一がこなしていたプレイスタイルに似ていて、今の代表チームにもはまりやすい。レギュラーの有力候補であることは間違いない。

 一方、柿谷は"代表スランプ"からようやく抜け出した感がある。オランダ戦で決定機を外したときの落ち込みようは半端なものではなかったが、ベルギー戦のゴールで吹っ切れたのではないだろうか。

 柿谷ほどの才能のある選手は、周囲が見え過ぎてしまうところがある。すると、どうしても自分よりいいポジションにいる選手が目に入って、パスを出してしまう。それが、ゴールにつながればいいけれども、結果が出なかったときは自らストレスを溜めることになる。自分でゴールを狙うときと、周りを生かすときのメリハリがついてくれば、柿谷はもっと生きるようになるはずだ。

 さて、オランダ、ベルギー戦では、大迫、柿谷、本田圭佑、岡崎慎司と、点をとるべき選手がゴールを決めた。だが、本田とともにチームの"エース"として期待されている香川真司は結果を残せなかった。

 その点を問題視する人が多いけれども、自分はまったく心配していない。チャンスを作れていないわけではなく、シュートまで持ち込めなかったわけでもない。アウトサイドから真ん中に潜り込んでくるプレイは、オランダ戦でも、ベルギー戦でも、相手に脅威を与えていた。相手の監督や選手たちからも「素晴らしい選手」という評価を得ていた。本人は、点をとりたくて仕方がないだろうけど、必要以上に不安視したり、騒ぎ立てたりする必要はない。

 ただ、もうひとりの"エース"本田は、圧巻だった。誰もが納得の存在感を示したと思う。

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