ドーハの悲劇、20年後に出てきたエピソード (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva photo by AFLO

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「ノさんは本当に素晴らしい人間だった。キムチをくれたり、いろいろ良くしてくれてさ。いわゆる『敵』じゃないんだよね。互いにベストを尽くして戦おうっていうスタンス。やっぱり、『世界を知っているから』なんだろうね。あの振る舞いには、ちょっと感動したよ」

 国籍の違いを乗り越え、困っているチームメイトのために助け舟を出したノ・ジュンユン。20年経っても、彼の人柄の良さは鮮明にドーハメンバーの心に刻まれている。


勝矢寿延が食事後、メンバー全員に提供した「フルーツタイム」

 日本代表が宿泊していたホテルの食事スタイルは、基本バイキングだった。各々が好きな食材を取って、テーブルで食事をして終了。リンゴや洋ナシなどのフルーツが大皿に盛り付けられていたが、カットされずに置いてあるので、皮を剥くのが面倒な選手たちは誰も手を出さなかったという。

 そんな状況を見かねて立ち上がったのが、ディフェンダーの勝矢寿延だ。実家が農業と漁業を営んでおり、幼いころから何でも自分でやっていた勝矢にとって、リンゴなどのフルーツの皮を剥くことなど朝飯前だった。さっそく、勝矢はバイキングに並んでいるリンゴを全部手に取り、皮を剥いてメンバー全員に振る舞った。

 いったい、どれくらいリンゴの皮を剥くのがうまいのか----。勝矢自身に聞いたところ、こんなエピソードを話してくれた。

「昔、知り合いの結婚式に呼ばれたとき、ゲームが始まったんですよ。新郎新婦も参加して、ふたり一組となってフルーツの皮を剥くんです。奥さんが剥いて、夫が食べて、そのスピードを競うゲームなんですけど、僕は加藤久(元日本代表ディフェンダー)さんとのコンビで出場しました。もちろん、僕が皮を剥く係。結果は......、断トツで1位でしたよ(笑)」

 食事の後は、勝矢の「フルーツタイム」。それは、恒例となった。ドーハに行ったメンバーは口々に、「勝矢さんの剥くスピードはすごく早かった」と大絶賛。今もみんなの記憶に残る心温まるエピソードだ。

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