【なでしこ】川澄奈穂美の思い――澤さんにもあやにもなれないから (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

「力があれば、必ず"その時"はやってくる。いつまでになでしこ入りして、中心選手になって......というものはまったくなかったので、成長とともに、結果がついてくればいいなという感じでした」

 力みがないからこその飛躍だった。

 ドイツでの世界制覇で、なでしこジャパンの面々は各方面で引っ張りだこになった。想像を絶するほどの注目度。澤穂希を筆頭に、彼女たちの行動はさまざまなメディアで取り上げられ、誌面を飾り続けた。

 川澄も例外ではなかった。むしろ、これまでも当然のように注目されていた澤らに比べれば、川澄を取り巻く状況はまさに一変した。

「最初は戸惑うこともありましたが、慣れました(笑)。それに、応援してもらえることは本当にありがたいことだし、私、注目されるプレッシャーとかもあまり気にならないタイプなんです(笑)」

 それまで、どこか遠慮がちにプレイをしていた川澄はW杯を経験して、明らかに変わった。それはW杯という最高峰の世界大会を経験したことだけが要因ではない。

 2011年の初め、所属するINAC神戸レオネッサに、澤、大野忍、近賀、南山千明が日テレ・ベレーザから、そして韓国からチ・ソヨンという強力なメンバーが加わった。INACが国内最強チームになることは約束されていた。だからこそ、川澄は自分たちの力を表現しなければならなかったし、レベルの高い選手たちと日々の練習を重ねることで自信にもつながっていった。

 そして、ロンドン五輪では、突然の左サイドへのポジション変更にも、川澄は対応してみせた。

「チームでは左サイドをやっていますし、持ち味の切れ込んでいく攻撃が活かせるポジション。まだぎこちないですけど、試合を重ねて行く中で成長できるのがなでしこ。大丈夫です!」

 ロンドン五輪の期間中、川澄はこう話していた。いろいろと個人的には悔しいところもあっただろう。だが、ロンドン五輪を終えた今、川澄はスッキリとした表情でこう語った。

「ワールドカップ、オリンピックと大きな大会が終わって、ミスが怖くなくなったって、最近すごく感じるんです。失敗することに対してネガティブにならずに練習に取り組めるなって。今までだったら、『安全に安全に』って思っていたところがあった。ここからは恐れずにどんどんチャレンジしていきたいな、いけるなって思います」

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