2012.05.31

【五輪代表】宇佐美貴史が見せた「ジョーカー」以上のインパクト

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

久しぶりに五輪代表のピッチに立った宇佐美貴史。再三見せ場を作って存在感を示した。 トゥーロン国際で、約1年2カ月ぶりに関塚ジャパンに合流した宇佐美貴史。この期間、勝負のかかったアジア最終予選にさえ招集されず、彼は晴れない気持ちをずっと抱えていた。

「五輪チームに呼ばれないのは、なぜなのかわからない。バイエルン側からは何の話もないし……。実力で落とされているのかもしれないけど、バイエルンには日本から話が来ているのに、オレの知らないところで断っているのかもしれない。実際、どうなっているのか、それすらわからないんですよ。それなのに、ブンデスリーガの試合にも出られないっていうのは……」

 今回のトゥーロン国際に関しては、宇佐美側からクラブに情報を提供し、クラブとの合意を得て、五輪代表への合流にこぎ着けたと言う。バイエルンでのこの1年間は、リーグ戦出場3試合。そのうち、2試合は先発出場だが、すでに消化試合と言える第32、33節だった。宇佐美には実戦への渇望感があっただろうし、1992年生まれの彼にとって24歳になる次の五輪での出場資格はないだけに、今度のロンドン五輪に対する思い入れも強かったのだろう。

 迎えた今大会、先発出場の機会は第2戦オランダ戦で巡ってきた。そこで、宇佐美は躍動した。前線の指宿洋史、高木善朗、齋藤学との呼吸も抜群で、第1戦のトルコ戦から8人のメンバーを入れ替えて臨んだ試合は、ゴールへのスピード感が明らかに増していた。

「2列目は『固定しなくていい』と監督から言われました。好きに動いて、(ボールに)近いポジションの人がパスを受ける、ということをやっていた。だから、ポジションを固定してプレイするよりも(自分は)やりやすかった。それに、みんな、ボールに触ってなんぼの選手なので、ピッチの中で話し合いながらうまくできました」

 ボールを奪ってからのシンプルなプレイを徹底し、スピードに乗った攻撃で相手ゴールへと次々に襲いかかった。宇佐美自身はドイツでの実戦経験は少ないものの、海外組同士で共通の感覚があったのだと言う。

「特に話はしなかったけれど、海外組にはボールが奪えたときには、ショートカウンターの意識が染み付いていると思った」