【なでしこ】ルーキー・京川舞は、
なぜ4試合連続ゴールにも笑顔がないのか? (2ページ目)
それが、1戦1戦形になってきた。手探り状態だった京川に「パスを当てたくても、(今の状態だと)当てにくいから、もっと要求していいんだよ」と澤はアドバイスを送った。吹っ切れたように京川はアクションを起こし始めた。味方のボールに合わせて裏へ飛び出すタイミング、ボールを呼び込む声はゴールに結びついた。
けれど、京川が決めたゴールは、崩しきったタイミングでボールが運ばれてきたものがほとんど。もちろん、そこへ身体を持っていくポジショニングに長けていることはいうまでもない。しかし、京川はセンターフォワード(CF)だ。ボールを持てば、自身の力でゴールをこじ開けていくのが仕事。京川がゴールを決めた後、素直にうれしさを表現できないでいるのはここにある。
「ボールを持ったら、まだ焦っちゃうんです。きっと、そこから先が見えてないんですよね。もらうところまでで必死で......。少しずつできるようにはなっているけど、早くチームに貢献できるようになりたいです」(京川)と、練習後も必ず居残りをして、シュート練習を繰り返す日々であった。
5月5日のジェフ戦でも、1ゴールを挙げたが、京川に心の底からの笑顔は見られなかった。
「7本打って、決まったのは1本。もっと、シュートの質を上げていかないと」
京川には心に決めていることがあった。昨シーズン、得点王を獲った大野と川澄が残した"12ゴール"という数字だ。今年はその役割を自分が担わなければならない。
開幕してからの4試合連続得点も、ゴールランキング首位タイという位置も新人選手の成績としては十分だ。だが、もっとできるはずだと、どうしても期待してしまう。何より、京川自身が納得していない。
神戸は他チームからより研究をされてきており、簡単なシーズンではないだろう。実際、昇格したばかりの大阪高槻と選手補強に苦しんだ福岡アンクラスと対戦した第2節までは大勝したが、守備に磨きをかけてきたAS狭山には3-2、ジェフレディースには3-1と攻撃を阻まれた上に失点を喫している。
「あれだけチャンスを決めきれずにいればピンチにもなる」という試合後の星川敬監督の言葉に、選手たちがどう応えるか。今後、上位争いをするチームとの対戦までにどう修正していくか見物である。そして、星川監督の言葉を誰よりも重く受け止めているのが京川だった。
「CFは自分。自分が決めないと! それだけでなく、大野さんや川澄さんのように周りを生かすプレイができるようにもなりたい」と決意を口にした。殻を破るまでには少し時間はかかるかもしれない。だが、必ず答えを見つけ出すだろう。自らのプレイで相手を崩してファインゴールを決めたとき、京川のはじけんばかりの笑顔が見られるはずだ。
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