【プロ野球】「優勝しても胴上げはしない」 選手たちが"嫌われ監督"を拒絶...それでも近藤貞雄が7度宙を舞った理由 (3ページ目)
それまで使っていた自分のバットでは対応できず、谷沢は後輩選手が使っていたタイ・カッブ式のバットを借りて打ってみた。軽く、ややグリップが太い形状が自分の感覚に合った。急遽、契約メーカーとは別のメーカーに製造を依頼。その新しいバットを手に、谷沢は9月14日の巨人戦で、1対2と追う6回、江川から起死回生の同点適時打を放った。
試合を見ていた契約メーカーの社長がバットの違いに気づき、クレームがきたが仕方なかった。
【観客が喜ぶ面白い野球を見せたい】
さらに9月28日の巨人戦では、完投ペースだった江川を中日打線が9回に攻略。代打・豊田誠佑の安打を口火に、ケン・モッカ、谷沢の3連打で無死満塁の好機を演出。大島康徳の犠飛で1点を返すと、宇野、中尾の連続適時打で一挙4点を奪い、6対6の同点に追いついた。
そして延長10回、2番手・角三男(現・盈男)から二死満塁の好機をつくると、大島のサヨナラ適時打が飛び出し、劇的な勝利を飾った。
首位巨人とは1.5ゲーム差の2位ながら、残り試合数が巨人より11も多い中日にマジック12が点灯した。近藤は試合後にこう言った。
「スキだらけでもいい。浮き沈みが激しくてもいい。野武士のような、野性味あふれる試合をしたいんだ。大差をひっくり返したり、エラーした選手がホームランを打ったり。観客が一番喜ぶはずですよ。江川を倒して最高のゲーム。選手に感謝している。これで巨人も焦りが出てくるでしょう」
黒江が考案した打撃練習の成果も実を結び、10月18日のシーズン最終の大洋(現・DeNA)戦で中日はリーグ優勝を決めた。歓喜の瞬間、真っ先にベンチを飛び出したのは、かつて近藤から引退を勧告された星野仙一と木俣達彦だった。胴上げが始まり、両手を大きく広げた近藤の体が七度、宙を舞った。
「仕方なく、胴上げしました(笑)。あの時、近藤さんはひとり、はしゃいでいましたよ。ちょっと目立ちたがり屋なところもありましたからね。これは日本ハムの監督をやっていた頃の話ですが、僕は評論家としてネット裏で試合を見ていたんです。するとオープン戦なのに、近藤さんがわざわざベンチを飛び出して審判に抗議するんですよ。でも、そうでもしないと、当時の日本ハムは注目されなかったから」
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