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「いつもの感じで投げていいですか?」 豪雨のブルペンで東浜巨が見せた大物感と、手のひらの骨がきしむほどの剛球 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

 初球。外角いっぱいに構えたミットへ、ボールはピシャッと吸い込まれてきた。ボールは雨で濡れ、マウンドの足元も緩んでいる。投手にとっては最悪に近いコンディションのはずだ。それでも東浜の投球からは、そんな状況を言い訳にしようとする気配がまるで感じられない。

 むしろ、こういう状況だからこそ、東浜のなかにある特別なアドレナリンが静かにたぎっているように見えた。ミットを構えているこちらのほうが、その熱量に煽られてしまうほどだった。

 とにかく威力がとんでもない。ボールの硬さが普段の倍ほどに感じられる。受けるたびに手のひらの骨がきしむ。ミットに収まるのではなく、めり込んでくる。

「調子いいみたいです!」

 東浜が微笑む。

 寮で着替えている時、ちらりと目に入った東浜の上半身を思い出した。鎖骨と肋骨が浮かび上がる細身の体。そこからは、とても想像できないような快速球がミットに突き刺さってくる。

「スライダー、いいですか?」

「もちろんだよ! もう、なんでもいいから放ってこい!」

 2月とはいえ、沖縄の空気は十分に蒸し暑い。豪雨が生む細かなミストと汗が顔中にまとわりつく。こちらのヤケクソ度も一気に上がっていた。

 スライダーが来て、カーブが来て、湿度100%のなかでも、投げ損じが1球もない。指先の感覚も天才的だ。

「シンカーもいいですか?」

「シンカー? おお、なんでも来い!」

 そう威勢よく言ってはみたものの、じつのところシンカーなんて受けたことがない。どんな動きをするんだ......じっと見守るしかなかった。

 腕の振りがほんの少しだけ強くなったように見えた。次の瞬間、ちょい緩めのシュート回転のボールが、右打者の足元へスッと沈んでいく。

 これがシンカーか......。初めて受けた球種。ミットに収まった瞬間、マスクの奥で思わず笑みがこぼれた。

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