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「いつもの感じで投げていいですか?」 豪雨のブルペンで東浜巨が見せた大物感と、手のひらの骨がきしむほどの剛球 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

 ありがたい......。気配りと心配りのできる嶺井は、天性のキャッチャー気質を備えている。

 ブルペンの屋根を叩く豪雨の音が怖いほど響いていた。高校ナンバーワン右腕との"決戦"を彩るBGMとしては、これ以上ない。もはや気分は、土砂降りのなかへワーッと駆け出していくような一種の極限状態......つまり、ヤケクソである。

「いつもの感じで投げていいですか?」

「もちろんだよ!」

 マウンドに立つ東浜だけがフラットだった。屋根を打ちつける雨音も、周囲のざわめきも、まるで存在しないかのように淡々としている。嵐のなかでも動じないその姿に、なんともいえない大物感があった。

 182センチの長身痩躯に、真っ白な練習用ユニフォームがよく映える。五厘に刈り上げた頭は小さく、顔立ちも驚くほど端正だ。

 つい見とれていると、立ち投げの初球がもうそこまで来ていた。

 フォームは、その頃からすでに絶滅危惧種になりつつあったワインドアップ。グラブの中にしっかりとボールを隠し、左足をこちらへ向かって踏み出しても、最後まで胸を見せない。いわゆる閉じた、開かないフォーム。このメカニズムなら制球を乱すことはないだろう。捕手としても不安はない。構えたミットを信じて、安心して待っていられる。

 それにしても、なんだ、この捕球の衝撃は!

 スリムな体躯から繰り出される、きれいな右のオーバーハンド。見た目の印象から、「パチン!」と軽快な音を立てて収まるタイプの球かと思っていたら、「ガツーン!」という衝撃が手元を突き抜けたのである。浅く握って前で弾くように投げる球ではない。指を深くかけ、リリースの瞬間に指先へ力を込めて、ボールを最後まで押し込むように投げる。まさに"剛球"だった。

【天才的な指先の感覚】

 いよいよ腰を下ろして、本気のピッチングが始まった。
 
「外いっぱいでお願いします!」

 とりあえず「投げればいいんでしょ」といった気配はまったく感じられない。一気に眼光が鋭くなっている。

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