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「ライオン丸」の異名をとった水上善雄 金田正一から「スポーツをする者が長髪なんて」と叱責されても伸ばし続けた理由 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── 8回裏、高沢選手の同点ホームランでロッテが追いついた直後の9回表。近鉄は大石選手を二塁に置き、新井宏昌選手が三塁線を破るかという痛烈な打球を放ち、勝ち越しかと思われましたが、水上さんが飛び込んで捕球しアウトにしました。

水上 私としては、ふつうに飛び込んで捕って、送球してアウトになったというだけです。実況アナウンサーが「ジス・イズ・プロ野球!」と絶叫してくれたそうです。でも一塁送球の際、わずかにショートバウンドしてしまい、私は恥ずかしかった。なぜなら、プロはアマチュアにはできないプレーを見せるものだと思っていたからです。

── グラウンドでは、さまざまなドラマがあったですね。

水上 そのプレーにしても、今のようにリクエスト制度があったら「セーフかも」というタイミングでした。当時、私も31歳で少し送球が弱くなっていました。

── 結局試合は延長10回引き分けで、近鉄の優勝はなくなりました。

水上 あのシーズンの近鉄は強かったですよ。ただあのダブルヘッダーに関しては、完全に打ち負けると思っていたのに、ロッテ投手陣が踏ん張りました。「優勝するなら勝って決めろよ」と思っていただけに、試合後シャワーを浴びながら「近鉄はもうひと踏ん張りできなかったな」という思いはありました。

【髪の毛を伸ばした本当の理由】

── その後、水上さんは広島、ダイエー(現・ソフトバンク)でもプレーされ、92年シーズンを最後に引退されました。現役時代、印象に残っている投手を3人挙げてください。

水上 右のアンダースローの山田久志さん(阪急)、左腕では鈴木啓示さん(近鉄)ですね。私と対戦した頃はふたりとも晩年でしたが、全盛期は150キロ近い球威と変化球のキレ、そして技術もあって、とてつもない勝ち星を上げてきた投手です。打席に立って対戦できるだけで光栄でした。

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