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【日本シリーズ】完全アウェーの甲子園で見せた執念 まさに11年前の再現、ソフトバンクを救った今宮健太の「神業キャッチ」

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 ソフトバンクが一歩前に出た。日本シリーズ第3戦でソフトバンクは阪神に逆転勝ちし、対戦成績を2勝1敗とした。完全アウェーの甲子園で1点差試合をモノにした意味は大きい。

「よう勝った」

 小久保裕紀監督も胸を撫で下ろした一戦だった。

6回裏、坂本誠志郎が放った飛球を好捕する今宮健太(右)とレフトの柳田悠岐 photo by Sankei Visual6回裏、坂本誠志郎が放った飛球を好捕する今宮健太(右)とレフトの柳田悠岐 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【チームのピンチを救った"超美守"】

 結果的に白星をつかんだが、逆に転んでもおかしくないゲームだった。4回以降はゲームセットまで、6イニング連続で得点圏に走者を背負った。

 しかも、2失策に加えて捕手のパスボールもひとつ。いつ自滅しても不思議ではない展開だった。甲子園の独特の雰囲気がそうさせたのか、土のグラウンドが影響したのか、晩秋に差しかかる冷え込みのせいか。とにかくスコアブックを書く手が忙しいほど、塁上は賑わった。

 それでも先発のリバン・モイネロが6回1失点でしのいで、自慢の必勝リレー"樹木トリオ"の藤井皓哉、松本裕樹、杉山一樹も耐えて、耐えて、耐えきった。

 ミスは目立ったが、勝ちをたぐり寄せる守備があった。こんな展開だったからこそ、余計にビッグプレーが目を引いた。

 6回裏だ。ソフトバンクは直前の攻撃で、柳町達に適時三塁打が飛び出して2対1と勝ち越しに成功していた。「点を取ったあとは取られるな」は鉄則である。

 この回先頭の3番・森下翔太に対し、モイネロがこの日初めてのフォアボールを与えてしまい出塁を許した。つづく4番・佐藤輝明の4球目に、森下がノーマークのバッテリーの隙を突いて盗塁に成功。ここでソフトバンクは申告敬遠を選択し、無死一、二塁となった。

 だが、ここからモイネロが踏ん張る。

 このシリーズで抑え込んでいる大山悠輔をセンターフライに仕留めると、つづく代打のラモン・ヘルナンデスには一塁ダグアウト方向へ力のないフライを打たせた。捕手・海野隆司も一塁手・山川穂高も追いつけないと思われたその瞬間、マウンドからモイネロが猛然とダッシュし、見事にキャッチしてみせた。めったに見られない「投手ファウルフライ」である。

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著者プロフィール

  • 田尻耕太郎

    田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)

    1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。

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