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WBCでの佐々木朗希の死球がつないだ縁 無名の米独立リーガー、ウィリー・エスカラがチェコ野球を変えた (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 幼い頃からプロ野球選手になることが夢だった。だから大学でも、公式戦だけじゃなくドラフトの登竜門と言われるサマーリーグにも積極的に参加。しかしMLBドラフトにかかることはなく、卒業後は米独立リーグの世界に飛び込んだ。

 そんなエスカラにとって、母国・アメリカやルーツのあるキューバのナショナルチームは壁が高すぎた。そんななか、世界の舞台に立つ方法として選んだのは、それまで縁もゆかりもないチェコだった。

 きっかけは、大学卒業後にプレーした独立リーグ「サセックスシティ・マイナーズ」のコーチだった。ドイツでも指導経験のあるそのコーチが、ヨーロッパでプレーする道を紹介してくれたのである。のちに、そのコーチがチェコに渡ると聞き、エスカラもその後を追うことになった。

「現役を続けられる可能性を探してチェコに来たんだ。アメリカでもプレー先を探したけれど、なかなかいいチームが見つからなくてね」

 2022年秋のWBC予選で本戦出場を決めたチェコにとっても、独立リーグとはいえアメリカでプロ経験のある「助っ人」は大歓迎だった。エスカラはチェコ国籍を取得。ナショナルチームの一員としてWBCに出場することになった。

 侍ジャパン戦で佐々木朗希の豪速球を膝に受けて悶絶し、場内を騒然とさせたものの痛い素ぶりを見せることなく一塁へダッシュ。

 この一連の行動で、チェコはさわやかなチームというイメージを世界中のファンに植えつけた。試合には敗れたものの、このWBCをきっかけに各国との交流が始まり、昨年秋には日本を再訪し、今年秋には韓国代表とのテストマッチが予定され、DeNAのトレバー・バウアーがチェコに訪問するというサプライズもあった。そう考えると、エスカラはチェコの野球界の発展の立役者と言っていいだろう。

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