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WBCでの佐々木朗希の死球がつないだ縁 無名の米独立リーガー、ウィリー・エスカラがチェコ野球を変えた (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

【再び東京ドームで試合することが目標】

 エスカラがあの死球について振り返る。

「アメージングな体験だったよ。ファンの熱狂もすごかったし、満員の東京ドームで試合ができたことは本当にすばらしい体験だった。独立リーグでは、あんな多くの観客の前で野球をすることはないからね。痛かったかって? そりゃ、あれほど速い球が直撃したんだから、痛いに決まっているさ。東京にいる間はずっと痛かった。まあ、その後のシーズンに影響はなかったけどね」

 WBC後、エスカラはアメリカでの独立リーグのシーズンが始まるまで、約1カ月チェコに残り、エクストラリガでプレーした。

 今シーズンは、昨シーズン途中に移籍した独立リーグ、アメリカン・アソシエーションのミルウォーキー・ミルクメンで開幕を迎えたが、シーズン途中でリリースされ、再びチェコに戻ってプレーを続けている。

 チェコの野球選手たちにとって、モチベーションとなっているのは来年に迫ったWBCだ。もちろん、エスカラも出場する気満々だ。シリーズ初戦でリーグを代表する投手から放った決勝ホームランは、最高のアピールになったはずだ。

「今のこのリーグで、次のWBCのために頑張っているよ。エクストラリガの選手は、みんなそうなんじゃないかな。ナショナルチームに選ばれれば、また日本でプレーできるからね」

 再び東京ドームの舞台に立つことを夢見るエスカラに、現在の佐々木の状況についてどう思っているか聞いてみた。

「じつは今シーズン、独立リーグのシーズンが始まる前に、シカゴでドジャースの試合を見たんだ。チームの本拠地が近かったからね。でも、先発は佐々木じゃなく、山本(由伸)だったけどね。佐々木がメジャークラスのポテンシャルを持っていることは間違いないよ。今は彼にとって、アメリカの野球にアジャストする期間じゃないかな。修正するところは修正して、頑張ってほしいね」

 再び対戦できることを夢見て、エスカラはエールを送った。

著者プロフィール

  • 阿佐 智

    阿佐 智 (あさ・さとし)

    これまで190カ国を訪ね歩き、22カ国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆。国内野球についても、プロから独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌、ウェブサイトに寄稿している。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。

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