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【プロ野球】球団スタッフが語る「天性の人たらし」中田翔、引退を決断した「チームに迷惑をかけたくない」の真意 (3ページ目)

  • 加藤潤●文 text by Kato Jun

「だって、若い時の自分がそう思っていたんだから。稲葉(篤紀)さんに(森本)稀哲さん。早くどいてくれって。だからこそ、今日一軍に呼ばれたのが津田で、ほんとによかったよね」

 8月12日、中田に替わって一軍に昇格したのは、2年目の津田啓史だった。

 今も昔も、中田は生意気であり、かわいくもある。風貌こそ近寄りがたいが、根は嘘のない真っ直ぐな男だ。それゆえ、過去には周囲に誤解されることもあり、ゆきすぎた行動をとったこともあったのだろう。

 とはいえ、過去の過ちを問いただしたり、詮索したりする理由は私にはない。私は週刊誌の記者ではなく、ただ縁あって2つのチームで同僚となったにすぎないのだから。

 プライベートで深く付き合ってきたわけではない。少人数で酒席を共にしたのも、ただ一度だけだ。昨年のシーズン終了後、焼肉を食べながら酒を酌み交わした際、雑居ビルの非常階段の踊り場で偶然ふたりきりになった。その時に「かとちゃんとの関係はこのまま変わらないだろうね」と、ぽつりと言われた。この言葉だけで、私は十分である。

 引退試合の日、私はファームの広島遠征に帯同していることだろう。グラウンドでの最後の勇姿を、この目で見ることができない寂しさはあるが、それもまた巡り合わせだ。

 つぼみの2年と、散りぎわの2年を共にできた腐れ縁に感謝。引退セレモニー後にベンチ裏の通路でハイタッチを交わす代わりに、この拙文を翔へのはなむけとしたい。

著者プロフィール

  • 加藤 潤

    加藤 潤 (かとう・じゅん)

    1974年生まれ。東京都出身。中日ドラゴンズ通訳。北海道日本ハムファイターズで通訳、広報、寮長に就いたのち、2011年から現職。シーズン中は本業をこなしながら、オフには海外渡航。90ヶ国を訪問。稀に文章を執筆。過去にはスポーツナビ、中日新聞、朝日新聞デジタル版に寄稿。またコロンビアのTV局、テレメデジンとテレアンティオキアに話題を提供。現地に赴き取材を受ける

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