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【プロ野球】引退決断の田中健二朗インタビュー「もうこれ以上、頑張れない」「最後はハヤテでもがくことができてよかった」 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 田中は照れくさそうに苦笑して言うと、こちらに目を合わせた。

「ただ、もう決めていたことなので、すぐに切り替えはできましたよ。今は本当にスッキリしたというか、やりきったな、終わったなっていう感じです」

 どこか台風一過のような清々しさを漂わせながら、田中は言った。

【ブラッシュアップに努めたハヤテでの2年】

 ハヤテでの2シーズン、田中は懸命に奮闘した。ウエスタン・リーグだけで戦う特殊なチーム事情のなかで、NPB12球団への復帰には独特の難しさがあったと思われるが、田中はどのような思いを抱き、何を感じながらマウンドに立っていたのだろうか。

「やっぱり難しさはありますよね。単に成績を残すだけでは、『獲得します』とはならない。ましてや30歳半ばのピッチャーですし、一軍ですぐ投げられることを求められます。そうなると、もう二軍選手との勝負ではないんです。

 試合では一軍でやっている投手や打者とのしのぎ合いになるし、また二軍にも将来を嘱望される化け物みたいな選手がたくさんいて、そこと比べられる。年齢はどうなのか、体力はあるのか、単にピッチングの良し悪しだけじゃなく、編成面も含めいろんな要素を加味したうえで獲得に至るんだなっていうのは感じましたね」

 一度戦力外を受けている以上、過去の遺産で勝負はできないと考えた田中は、この2年間、自身のブラッシュアップに努めてきた。

「僕の場合は球速が出ないので、見栄えという部分を気にしていて、だったら三振を取らなければいけないだろうって。まず、左打者からなかなか空振りが取れないのが課題でした。インコースで勝負できる強みはあるのですが、それだけでは苦しいので、スライダーというか、大きく曲げるのではなくカットに近い球種を磨いて勝負したんですが、空振りを取るまでには至りませんでしたね」

 残念ながら努力は実を結ばなかったが、それでも自分自身に向き合い、汗と泥にまみれたハヤテでの2年間は充実したものだった。

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