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山本由伸はセットアッパーから球界のエースへ 高山郁夫が語る若手の躍進を支えた福良淳一の眼力と人間力 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── 「条件」とは何ですか?

高山 今シーズン限定のリリーフ。原則8回の1イニングを2連投まで。そして、球数が30球を超えた翌日のゲームは、本人、トレーナーの意見を尊重する形をとりました。

── 今やメジャーリーガーとして活躍している山本投手ですが、プロ2年目の2018年は54登板で4勝2敗32ホールド、防御率2.89を記録しています。今にして思えば、この年に実戦経験を積めたことが後年に生きたようにも映ります。

高山 それは本人に聞いてみないと何とも言えませんが(笑)。ただ、試合終盤のしびれる場面を数多く乗り越え、チームに勝利を呼び込んだ自信は、揺らぐことはないと思います。そして、あらためてリリーフの大変さや重要性を体感したことによって、先発投手としての責任感がより強く増したと思います。それが大エースに成長してほしいと願う、福良監督の狙いだったと思います。

── 8回の起用にこだわったようですが、8回は起用しやすいのでしょうか?

高山 比較的、継投の決断がしやすいイニングです。ゲームが動きやすい5、6、7回を担当するリリーフは、気持ちと肩のつくり方が非常に難しい、タフな仕事になります。由伸は基本的に、同点か僅差の勝ちゲームでの仕事になりましたが、ブルペンにGOサインを出したら、多少追加点が入っても一発でマウンドに上げました。何度もつくらせることは避け、無駄な消耗をさせないことを心がけていました。

【変わらぬ人柄と強い意志】

── 今後も「8回」は有望投手の起用プランのひとつになるかもしれませんね。ところで、福良監督とはそれまでに接点はあったのですか?

高山 福良さんが日本ハムでコーチをしていた時に、試合前のグラウンドレベルでご挨拶させてもらう程度でした。

── 実際に接してみて、どんな監督でしたか?

高山 2014、2015年にはヘッドコーチ、監督代行として仕事をご一緒させていただいていました。監督になられても当時と何も変わらず、偉ぶるわけでもなく、そのままの福良さんでした(笑)。コーチ、選手、スタッフの意見には、真剣に耳を傾けてくださり、監督としての強い意志もある。仕事のしやすい環境をつくっていただきました。

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