今年の虎の4番はここが違う! 名コーチ・伊勢孝夫が語る「大人になったサトテルの打撃」の全貌 (2ページ目)
本人も「上半身の力を抜き、下半身から力を使えている」と語っていたが、そのおかげで苦手だった高めの球も仕留められるようになってきた。
これは私の憶測にすぎないが、昨シーズン後半、サトテルはメジャー流の"すり足"に近いステップを試していた。今年のキャンプでもそのようなフォームだったと記憶している。そこから徐々に、今の形に修正していった。よりいい感覚を求めて模索するなかで、メジャー流から自分に合ったスタイルにたどり着いたのだろう。
【課題はスランプ脱出法】
ただ、サトテルが"覚醒"したのかと問われれば、まだ疑問符がつく。というのは、150キロを超える力あるストレートを完璧に捉えた打球がほとんどないからだ。高めのストレートを本塁打にするシーンもあったが、そのボールも150キロ未満だった。速い球を仕留めてこそ、ますます手のつけられない打者へと成長していくのだ。
当然ながら、他球団のバッテリーは対策を練ってくるだろう。考えられるのは、インハイを意識させつつアウトローで仕留めるパターンか、もしくはその逆でアウトローを攻めておいて、最後にインハイを突いて打ち取るパターンだ。さらに、インハイを意識させておいて、インコースの膝もとに投げ込む、いわゆる"左打者攻略パターン"を徹底してくるはずだ。
そうした攻めに対し、どこまで対応できるかがカギになる。また技術的な問題はもちろんだが、このレベルになると"頭脳"も必要になってくる。要するに、どこまで配球を読めるかだ。
それに加えて、コンディションの維持も重要になる。選手も生身の人間である以上、毎朝決まった時間に球場入りし、同じルーティンを繰り返しても、微妙なズレや狂いは生じてくる。毎打席まったく同じスイングをすることは不可能だ。逆に言えば、バッテリーはそのズレを生じさせるために配球を工夫しているわけだ。
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