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あのFA移籍した左腕もかつてはメンタル崩壊 高山郁夫が伝授する「自信を失った投手」の再生法 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── 高山さんは複数の球団で二軍コーチも経験していますが、プロですっかり自信を喪失した若手投手も見てこられたのでしょうね。

高山 はい。表情に出やすいのが投手の特徴ですが、もっと言うと、後ろ向きな言動、行動、態度が増えてきます。本人は気づいているかわかりませんが。

── そんな選手には、コーチとしてどうアプローチしていくのでしょうか。

高山 選手の話を聞いたうえで、あらためて本人の長所を確認しながら、そこを生かす方法を話していたと思います。基本的に、自信をなくして視野が狭くなっている状態なので、前向きな発想の転換をするなどして、モチベーションを保てるように接していた記憶があります。

── 対話を重視する、高山さんらしいやり方ですね。

高山 ただ難しかったのは、本当にごくごく稀でしたが、会話がなかなか成立しない選手もいました。プロ野球の世界の厳しさや、現実を知ってか知らずか、間違ったプライドか何かわかりませんが、自分自身の評価が非常に高く、チームのなかでの底辺に近い現在地が理解できない。これは私の力不足だったと思いますが、苦い思い出があります。

オリックスから日本ハムに移籍した昨季、10勝を挙げた山﨑福也 photo by Koike Yoshihiroオリックスから日本ハムに移籍した昨季、10勝を挙げた山﨑福也 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る

【技術指導の前に必要な対話の重要性】

── プロの世界で自信を失い、立ち直った選手もいたのでしょうか?

高山 オリックス時代に接した山﨑福也(現・日本ハム)はそうだったと思います。

── そうなのですね。それは意外です。

高山 福也が、新天地で(伏見)寅威とともに頑張っている姿を見て、本当にうれしく思っています。2015年のドラフト1位でオリックスに入団し、遅咲きの感は否めないですが、自分の投球スタイルが確立されたのだと思います。現役選手なので詳細は控えますが、入団当初からの数年は何度も何度も挫折して、メンタルが崩壊している時期があったようです。私がオリックスに戻った2018年の春季キャンプでは、気力が失せて、まったく存在感がありませんでした。

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