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赤星憲広が語る藤川球児の覚醒前夜 戦力外寸前から虎の守護神になるまで 「実際、トレードの話はあった」 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── 岡田監督がリリーバーに適性があると見て、完全転向させたのですね。

赤星 そうです。2005年は80試合に登板して46ホールド。ポテンシャルが一気に開花しジェフ・ウィリアムス、球児、久保田智之のいわゆる"JFK"という勝利の方程式が確立したのです。

【球児が打たれたのだから仕方ない】

── その2005年の4月、大差の試合でストレートを投げなかった藤川投手を清原和博選手(巨人)が批判した事件もありました。

赤星 そのわずか2カ月後に球児は真っ向勝負を挑み、清原さんを抑えました。球児のストレートに清原さんは「火の玉や」と絶賛しました。すばらしい球でした。

── わずか2カ月で心理的にも急成長を遂げ、シーズン46ホールドまで積み重ねたのですね。

赤星 本人の努力の賜物であるのは間違いありませんが、鳴り物入りで入団しながら、プロ入り5年間は鳴かず飛ばずの状態でしたから、自分でも「このままだとヤバい」と、戦力外の危機を感じていたのではないでしょうか。近年は"育成選手"扱いにするところもありますが、当時は5年間も待ってくれるチームは少なかったですから。のちになってわかったのですが、実際、球児はトレード要員だったそうです。そう言えば、思い出深い試合がもうひとつあります。

── 教えてください。

赤星 2008年10月20日のクライマックスシリーズ第1ステージの中日との第3戦。0対0の9回表二死三塁。マウンドには球児、打席にタイロン・ウッズ。カウント3ボールからフルカウントになりました。その場面、四球で歩かせるという選択肢もありましたし、フォークを投げれば三振に打ちとれる確率は高かったと思います。ただ、球児はサインに首を振っていたので、ストレートにこだわっていたのでしょう。

── 「際どいところに投げて打ち損じを狙うか、歩かせてもいい」と、当時の解説者は連呼していました。

赤星 球児の持ち球はストレートとフォークの2つです。ただ、意地になってストレートを投げ続ける投手ではありません。僕たちは捕手のサインで守備位置を変える"ポジショニング"を取りますが、配球には投手と捕手、そして対戦している打者にしかわからない感覚的なものがあると思います。

 結局、フルカウントからのストレートをウッズはものの見事にレフトに決勝2ラン。打った瞬間ホームランとわかる超特大アーチ。センターの僕が一歩も動かなかったのは初めてでした。結果、レギュラーシーズン2位の阪神は、CS第2ステージに進めませんでした。

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