広岡達朗が語る村上宗隆と清宮幸太郎への期待と不安 「打率2割4分台でメジャー挑戦なんて馬鹿げている」「監督が新庄じゃなかったら...」 (3ページ目)
後半戦の打棒により、ようやく覚醒したと報道されているが、広岡の意見はこうだ。
「この程度の数字で、メディアは何を褒めちぎっているんだ。高校時代に100本以上のホームランを放ち、入団会見では『世界の王貞治選手の記録を塗り替えたい』と豪語したにも関わらず、ここまでこれといった結果を残せていない。監督が新庄(剛志)じゃなかったら、これほど辛抱強く起用されていたかどうかもわからない。高校時代に金属バットでいくらホームランを打とうが、プロに入ったらそんな実績など関係ない。もともと清宮は大器晩成型だと思っていたから、オレは早稲田大学進学を勧めていたんだ」
厳しい言葉が並ぶが、昨シーズン後半のバッティングについては成長も認めている。
「打てるようになったのは、まず間(ま)が取れるようになったこと。バッティングというのは、突き詰めれば、タイミングの取り方とスイング軌道だ。この2つがしっかりできていれば、自ずと結果はついてくる。一流の打者というのはタイミングと軌道をチェックポイントにしていて、好不調の波を少しでも小さくするよう努力している。
もうひとつ清宮の大きな変化は、状況を見極め、この場面で自分がすべきことは何かを理解してプレーできるようになったことだ。いつも自分が決めてやろうと思って打席に入るのではなく、次の打者につなげることもチームプレーであり、勝利を呼び込むのだ。清宮のバッティングを見ていると、それがほんの少しだけわかってきたんじゃないか。でもまだまだだ」
いずれにしても、今シーズンどれだけチームの勝利に貢献できるか、またどれだけの数字を残せるのかが重要である。
「昨シーズン後半の打席の感覚を忘れず、今シーズンにつなげられるかは、このオフの取り組みにかかっている。『もうあとがない』と気持ちでやらないと、いよいよ危ないぞ!」
"投高打低"の状態が続いているプロ野球界。それでも次代のスラッガーとして入団してきた村上と清宮には、圧倒的なバッティングを見せてほしいという願いがあるのだろう。ふたりにとって、今シーズンが野球人生のターニングポイントになることは間違いなさそうだ。
著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。
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