【日本シリーズ2024】ソフトバンク育成ドラフト10位入団の「マエジュン」が大舞台で躍動 指揮官も「使い道は決まった」と太鼓判 (2ページ目)
二軍ではウエスタン最多勝の10勝、防御率は同リーグ3位の1.95の堂々たる成績を挙げた。そして9月29日の日本ハム戦で一軍デビュー。先発で6回を投げて被安打3、奪三振5、無四球で無失点の満点ピッチングでプロ初勝利を飾ったのだった。
前田純は、パワー系投手全盛の時代のなかで異彩を放つ。身長189センチの長身だがスラリとした体型。真上から投げ下ろす直球は140キロそこそこだ。だが、米大リーグで「VAA」と表現されるベース板にボールが入る角度(バーティカル・アプローチ・アングル)が優秀なのだろう。その球速帯の直球でも十分に勝負ができる。さらにチェンジアップの"抜け"もよく、日本ハム戦での投球を見ても初見の打者がかなり苦戦する様子がわかった。
【日本シリーズでも堂々の投球】
はたして育成ドラフト10位入団から支配下登録を経て、わずか3カ月後に迎えた日本シリーズ初登板のマウンドだったが、強力なDeNA打線に対しても堂々たるピッチングを披露した。
最初の打者だった森敬斗にはフルカウントと粘られるも最後は143キロ直球で空振り三振。「3ボールまでいったけど、四球を出さなかった」と自信も持てた。続くこの日絶好調だった桑原も遊ゴロに仕留めるなど3者凡退。7回表もマウンドに上がり、牧秀悟を大きなカーブで遊飛、オースティンはチェンジアップで空振り三振、筒香は直球で一ゴロと、まさに変幻自在のピッチングで強打者たちを翻ろうしたのだった。
大舞台で2回完全投球。そばで取材していたDeNA担当に「何者?」と聞かれ、どう表現すれば伝わるのか思案した結果、「阪神の大竹耕太郎の背をもう少し大きくした感じ」と説明した。それが一番わかりやすいと思う。
完ぺきな投球を見せた前田純だったが、実はめちゃくちゃ緊張していたと試合後に苦笑いを浮かべながら振り返った。
「5回表くらいに『6回の頭から行くから』と言われて。『おおぉ』と思いました」
文字にしづらいうなり声は決して威勢のいいものではなかった。
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