【日本シリーズ2024】ソフトバンク育成ドラフト10位入団の「マエジュン」が大舞台で躍動 指揮官も「使い道は決まった」と太鼓判 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

「最初は『えっ、マジ?』みたいな感じになりました。でも、ずっと(試合で)投げていなかったので楽しみが湧いてきて。それと同時に緊張もしてきて。ちょっと気持ちがふわふわしちゃっていたので、鎮めよう、鎮めようと思ってブルペンで準備をしていました」

 ただ、その緊張感は日本シリーズの大舞台が引き起こしたというより、やり慣れない中継ぎでの登板で気持ちのつくり方が難しかったからだと言った。そんな精神状態だった影響か、マウンドに上がって最初に森敬斗と対戦した際には2球続けてサイン違いのボールを投げてしまい、捕手の甲斐拓也がたまらず前田純のもとに歩み寄るシーンもあった。

 そして、前田純にはこんな質問もした。

── 自身の中学とか高校時代を考えれば、4万人超満員の日本シリーズのマウンドに立つというのはスゴイことだと思うけど?

 前田純は小さく笑ってうなずいた。

「それは本当にスゴいことだと感じて投げました。幸せでした、はい」

【高校時代は公式戦登板なし】

 先述したように高校は主砲・山川の後輩にあたるが、実は高校3年間で公式戦登板は一度もない。

「ベンチに入ったことが一回もなかったんです。中学校でも最後の大会で一度入っただけ。小学校の時はレギュラーでしたが、ピッチャーじゃなくてファーストで出ていました」

 そんな選手がなぜプロ入りできたのか。

「小さい頃、野球を始めた時からプロを目指していました。実力はないけどプロに行こうと思ってやってきました」

 日本文理大学でも下級生の頃はまったく試合で投げることはなかった。だが、運命の出会いを果たす。

「大学で元プロ野球選手の吉川輝昭さんにずっと教えてもらいました。マンツーマンで付き合ってくれて、それで自分の特徴を生かした投げ方になって、自信がつきました。身長がある分、角度を生かした方がいいんじゃないかと。それまでは腰の回転を早く、リリースポイントを前という意識だったのが、上からたたくようになって奪三振も多くなったんです」

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