斎藤佑樹が絶対に泣かないと思っていた鎌ヶ谷でのラスト登板で涙 「幸太郎のせいです」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

【現役引退を決断した理由】

 その約2週間前、僕は平塚でのベイスターズとの二軍戦(9月20日)で2番手として投げています。その日は試合前から特別に右肩が痛くて、右腕が肩のラインより上に上がりませんでした。上げようとすると痛いし、シビれてくる......そんな状態でも、僕に投げないという選択肢はありませんでした。

 プロ11年目の2021年は右ヒジを痛めていたのに契約をしてもらって、もし結果が出なかったら野球を辞める覚悟は持っていました。だからどんな形であってもシーズンの最後まで投げ続けなければいけないし、それがチームに対する僕の最低限の責任だと思っていました。

 2番手として3回からマウンドに上がったんですが、1イニング(21球)を投げて、覚えているのはストレートのスピードが意外に出ていたということです。痛み止めを飲んだらそれが効いたのか、ブルペンであんなに痛かった右肩がマウンドへ上がったら痛くなくなったんです。しかも平塚の球場はマウンドが軟らかくて土が掘れるから、体重が前に乗りやすくなって腕が振れる感覚になるんです。そのせいでスピードも球場の(スピード)ガンで138キロまで出て、「おっ、今日は行けそうだな」って、ちょっとだけ思っちゃいました。

 でも、そういうときこそ丁寧にいかなきゃいけないのに、腕が振れる分、コントロールがアバウトになって......そんなことを何度も繰り返していたんですけどね(苦笑)。たしか1点を取られたのかな(知野直人、田中俊太にツーベースヒットを打たれた)。試合後、病院で検査を受けた結果、右肩の関節唇と腱板が損傷していると言われて......なんとなく、そういう診断が下るんだろうなということはどこかで覚悟していました。

 ただ、気持ちのどこかで画期的な治療法があるんじゃないか、なんて期待する自分もいて......右ヒジの靱帯を手術せずに治せると言われたときのように、僕のこの肩をどうにかしてくれるんじゃないかという期待を一瞬、していました。

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