2年ぶりの一軍登板、ヤクルト奥川恭伸を戸田で見守ったコーチたちの回想録 「途中で心が折れかけて...」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 小野寺力コーチは「正直、やっと一軍に行けたなと。ここまで長かったですね」と、安堵の表情を見せた。小野寺コーチは、奥川の1年目の二軍キャンプから叱咤激励を続けてきた。

「この2年間は......野球にケガはつきものですけど、ちょっと多かったですよね。1年目に右ヒジの違和感があり、2年目は一軍で活躍しましたが、3年目に右ヒジを痛めてしまった。去年も一軍を目前にしていたところで左足首をケガして、今年も一軍キャンプに参加して『状態いいよね』というところで腰を痛めてしまった。ただ、ヒジは負担のかからないフォームにしていて、そこに関して問題がないのはよかったのかなと」

 小野寺コーチは苦しんだ時間が長かった分、これからの奥川に期待を込める。

「この時間の長さが、強さに変わってくれると思います。野球人生は長いですし、また困難なことが訪れるかもしれないですけど、その時のためにこうして苦労したことはよかったのかなと」

 ここまでの過程で、弱気になる奥川の姿を見てきたと小野寺コーチは言う。

「やっぱり野球が大好きな子なので、野球ができないことへの苦痛というか、そういう姿はありました。途中で心が折れかけて......言葉にするのは難しいですが、やる気がないわけじゃないんですけど、やる気が出てこないというか。かわいそうですけど、最終的には自分で乗り越えるしかないですし、コーチとしてはその時にできることをしっかりやっていこうよと。そして復帰すれば、ケガをする前以上の体や技術を習得しようという話はしました」

 2年ぶりとなる一軍でのピッチングについては、こう話した。

「今はやっと自分のなかで、多少納得できる感じになっていると思うので、それがすぐ一軍で通用するかとなると、そこはやってみないとわからないですよね。でも本人も言っていましたが、しっかり腕を振って打者と勝負して、今の自分のピッチングがどのくらいにあるのかを感じてくれたらいいなと。そこで課題も見つかるでしょうし、次にその課題をクリアして、打者を抑えながら一歩一歩成長してもらえたらと思っています」

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