高山郁夫が明かす「ブルペンの世界」 2007年、プロ9年目の水田章雄はなぜ34歳でブレイクしたのか
高山郁夫の若者を輝かせる対話式コーチング〜第6回
オリックスのリーグ3連覇を陰で支えた投手コーチ・高山郁夫さんに指導論を聞くシリーズ「若者を輝かせるための対話式コーチング」の第6回。今回のテーマは「ブルペンコーチ」。2007年のソフトバンク一軍ブルペンコーチ時代の経験とプロ野球選手が慢性的に抱える「不安」について、語ってもらった。
【外国人投手との接し方】
── 高山さんはコーチとしてソフトバンクに入団して2年目の2007年に、二軍投手コーチから一軍投手コーチ(ブルペン担当)に配置転換されています。ブルペン担当コーチとは、どんな役割を担うのでしょうか。
高山 ベンチとのやりとりのなかで、どの投手を準備させるべきか、休ませるべきかを判断する役割でした。ただし、試合の局面は急に変わるので、難しかったですね。私は「今日は投げない」というピッチャーに関しては、「ボールすら持たせたくない」と考えていました。
── リリーフ投手はブルペンで、どれくらい投げて準備するのでしょうか?
高山 今では登板する直前に1回だけブルペンで準備する「一発づくり」のチームが増えていますが、2007年の頃はブルペンで2回つくる投手が主流でした。たとえ試合が動いていなくても、試合序盤にキャッチャーを座らせて10球程度投げるピッチャーも結構いました。その準備がないと、不安があるからです。
── 一発づくりと比べれば、リリーフ投手の負担は大きくなりますね。
高山 1年間トータルで考えると、蓄積された疲労がたまっていきます。だから私は、無駄なボールを投げさせたくありませんでした。
── 高山さんがその考えに行き着いたきっかけは何だったのでしょうか。
高山 西武でプレーした現役時代の1984年と1986年に、アメリカでプレーした経験がありました。当時、西武の若手選手たちは4〜9月はカリフォルニアリーグ(シングルA)、秋にはアストロズの教育リーグに派遣されることが多かったんです。アメリカの文化に触れてみて、日本とは考え方がまるで違って戸惑いました。向こうのコーチからは「無駄なボールを投げるな」「試合前に疲れることをするな」と厳しく言われました。とにかく球数と登板間隔を管理されて、すごかったですね。こちらはボールを握っていないと不安なんですけど、キャッチボールをしたり走ったりすると「勝手なことをするな」と怒られる(笑)。ブルペンで投げる時間を「8分間」と決められたこともありました。立ち投げをしたら5分くらい過ぎてしまって、捕手を座らせて10球くらいしか投げられないこともありました(笑)。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。